ヴィシュワ・プラカシュの翻訳本を文芸社から出版する

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タイトル:「誰が私の魂を盗んだのか?
人生の意味に関する悪魔との対話」

著者名:ヴィシュワ・プラカシュ
訳者名:荒尾 紀倫
出版社:文芸社
価格:本体1,500円+税

目次
笑いヨガ創始者の日本語版へのまえがき
著者まえがき
第1章 悪魔とヴィシュワの対話
第2章 誰が私の魂を盗んだのか?
第3章 与えて得る
第4章 意味の意味すること
第5章 悪魔、仮面を脱ぐ
第6章 野獣の本性
第7章 悪魔にも良いところはある
第8章 魂のエネルギー
第9章 有言実行
第10章  最後に笑う者
笑いヨガ創始者による原著へのあとがき
訳者あとがき
付録 笑いの健康への効果

私の怒りっぽい嫌な性格が笑いヨガによって治ったことを笑いヨガ国際大学のホームページに書きましたところ、これを読んだヴィシュワ・プラカシュ(米国における笑いヨガマスター)が自分も同じような経験をしたとメールを寄越して来ました。それ以来彼との交流が始まり、そのうちに彼のWho Stole My Soul?の翻訳を依頼され、今年の初めに文芸社から「誰が私の魂を盗んだのか?」と題して出版しました。
ヴィシュワは米国で織物デザイン会社を経営し、世間的には成功していましたが、笑いヨガの存在を知り、その創始者であるマダン・カタリア博士から直々に指導を受け、米国におけるマスターになり、ボランティアで笑いヨガの普及活動を始めました。笑いヨガに打ち込むうちに本来の織物デザインの仕事に身が入らなくなり、自分の魂が盗まれてしまったかのような状態になり、ビジネスマンの考え方とそれを否定する気持ちとの葛藤に悩みます。
当時のヴィシュワについてマダン・カタリア博士は「2004年にティーチャーの訓練を受けに来たヴィシュワは人生における多大なストレスを感じていた」と評しています。ビジネス世界に身を置いていたヴィシュワはビジネスマンとしての怒り、嫉妬、報復、自己不信、劣等感などを引きずっていました。しかし、笑いヨガ体操を人々のためにリードすることによって、ヴィシュワは人々の緊張とストレスを払いのけ、人々が欲求不満、怒り、苦悩、日々の不平不満から解放されるのを手助けします。憂鬱や孤独感を自然な笑いに変える手助けをするのです。与え分かち合うことにある種この上ない喜びを感じます。
ヴィシュワは笑いヨガで味わえる喜びと自分の内なる悪魔的な感情と戦うためには、その悪魔的な感情の正体を見極め、他人への思いやりや気配りを育む必要があることに気づきます。そのために自分の考え、信念、感情を変え、積極的な感情や考えを持つよう自分自身に命じます。消極的な感情が出て来た時には、他人への思いやり、世界と自然への思いやり、自分自身への思いやりを持つように努めます。ヴィシュワはこのように自問自答しながら思いやりの感情を日常的に持てるように自ら創ったGAFLOP(Gratitude:感謝する、Appreciation:尊重する、Forgiveness:惜しみなく与え許す、Laughter:微笑み笑う、Optimism:良い結果を思い浮かべる、Prayer:純粋な心で祈る)なるモットーを実行して自分の内なる葛藤を克服します。その過程を悪魔との対話の形式で表現したのがこの本です。
私も笑いヨガの経験からヴィシュワが掲げたモットーがよく理解できます。私は今では自分のことより人のためになることを考えるようになりました。現在笑いヨガ体操をボランティアでコミュニティーの人々のためにやっていますが、ヴィシュワの表現によれば「思いやりのモードに入ると、誰に対しても腹を立てたり、悪意を持ったりする気がしなくなります。素晴らしい平穏がやって来て私を愛で包みます。」
ヴィシュワは日本語版の出版を記念して日本で講演を行うことを楽しみにしていましたが、残念ながらこの本が出版される前にこの世を去ってしまいました。彼の墓前にこの本を捧げ冥福を祈ります。

投稿者: 荒尾 紀倫(あらお のりみち) ロシア語 1962年卒業

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私の編訳本紹介『S.モームが薦めた米国短編』

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今年十一月中旬に出版社未知谷から上記写真題名の編訳を出版しました。

サマセット・モーム(1874-1965)は数多くの小説、戯曲、紀行文、エッセイなどを発表していますが,他にいくつかのアンソロジーを編纂しています。その中に1943年にニューヨークのダブルデー社から刊行されたGreat Modern Reading: W. Somerset Maugham’s Introduction to English and American literature があるのを私はモームの南海もの短編集The Trembling of a Leaf(拙訳『一葉の震え』近代文藝社、2015)の翻訳中に知りました。

このアンソロジーは、当時、書籍が簡単に手に入りにくかった地方に住むアメリカの読者が、英米文学を広く浅く俯瞰できるように、20世紀前半の英米の作家や文人による短編小説(short stories)、詩、文芸評論、エッセイ、書簡などを153篇詰め込んだかなり浩瀚な本です。筆者はアメリカ文学の研究者ではないのですが、どうしてもいくつかの米人作家の短編小説とモームがそれらを選択した視点と作品に対するコメントを併せて紹介したいという強い思いに駆られました。上記アンソロジーに採録された米国人作家の短編小説43篇から筆者自身の基準で9篇を選択し翻訳しました。しかし、出版する段階になって、紙数の関係で3篇は割愛せざるをえませんでした。

皮肉なことに、その中の一つヘンリー・ジェイムズ著The Beast in the Jungleは随所に晦渋な文章があり、筆者は翻訳に最も苦しみ、最も長い時間を費やしたのですがその反面、仕上げた訳文にそれなりの自負があり愛着のある作品でした。しかし、これは短編というより中編に近い紙数のため、未知谷の編集者とすぐ合意できた6作品の出版を前提にすると、どうしても編入できず、後ろ髪を引かれながら、削らざるをえませんでした。

結局残った6作品は、いずれもモームの好みにあった作風で、奇抜なあるいは予想外の結末で読者に強烈な印象を与える名作です。六人の作家のうち三人は世界大恐慌後に、互いに10年以内の間隔でノーベル賞を受賞した作家(1949年ウイリアム・フォークナー、1954年アーネスト・ネミングウエイ、1962年ジョン・スタインベック)で、彼らは世界的に著名ですから、ほとんどの読書人は彼らの作品の一つや二つあるいはそれ以上を読んでいるでしょう。ここで取り上げた作品については、冒頭の私のささやかな解説も参考にしてまず読んでいただきたいです。

残る3人の作家もそれぞれにユニークで評価の高い作品を発表しています。特にF.スコット・フィッツジェラルドは日本でもファンが多い作家で、拙訳『再訪のバビロン』は、先人による既訳もいくつかあり、私としても意識せざるをえず力がはいりました。イーディス・ウオートンの『ローマ熱』は二人の上流社会の婦人の会話の展開が絶妙です。

途中で思わぬ病魔に見舞われたこともあり、翻訳を始めてから出版されるまでに2年余の時間が経過しましたが、本編訳の上梓は喜寿を迎えた年を締めくくるにふさわしい出来事で何よりの励ましとなりました。

投稿者: 小牟田康彦  英米科1965年卒業

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出版案内『ある言語学者の回顧録―なな踰矩ゆく―』

崎山 理 著
発行 風詠社/発売 星雲社
2017年11月9日発売
定価 本体1,300円+税
A5判 195頁
ISBN978-4-434-23732-4 C0095

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【本の紹介:「帯」から】

言語学の第一人者による留学記、講演、追悼文(田島宏、寺村秀夫、泉井久之助ほか)、対談(初代姫神、湯浅浩史、片山一道)等を収めた知的興味を喚起するエッセイ集。

【内容:「まえがき」から】

書名の副題、なな踰矩ゆくは、論語「七十而従心所欲、不踰矩(七十にして心の欲するところに従い、則を越えない)」から逆説的にとったもの。本年2月、心のおもむくままに、しかし力を振り絞って、従来の日本語系統論を批判しつつ、新たな日本語形成論を上梓することができた。従来の研究方法、言語の混合と意味の分析に新風を吹き込んだという点では、十分に則を越えたと自負している。この書において、私は日本語形成における原点に立ち返り、日本語史の深淵を覗き見たような気すらしている。それは、はるかかなたにあって現代に微光しか届かなくなった現代日本語の揺籃期の姿が、私の形成論によってほぼ明らかにされたと言ってもよい。本書『日本語「形成」論―日本語史における系統と混合―』三省堂(2017)は、東京外語会HP会員頼り(2017年1月16日)で紹介させていただいた。

私は、「言語学」の殻に籠城し保身するような、狭く限られた言語学を潔しとしない。すなわち、言語のない人間文化はあり得ないと同様に、文化から切り離した言語も考えられない。その学問的影響は、長く勤務した国立民族学博物館における豊かな内的・外的環境から得られたことも大きいが、言語は文化の一要素としてしか考えられないというのが、私の学生時代から一貫して堅持してきたスタンスである。本書の内容は、私の来し方すべてを物語るものではさらさらないが、里程標にはなっているようだ。

【「目次」から】

留学・調査記
1 インドネシアに学んで
2 モロタイ島は遠かった―薄れゆく戦争の記憶
3 パプアニューギニア現地たより
4 ニューギニアの楽器とその音楽
5 絶滅したマレー語―南アフリカ共和国
6 日本語もうひとつの歩み
7 関西の人

報告・エッセイ・講演
8 言語学からの報告
9 マダガスカル語系統研究その後
10 消滅の危機に瀕した言語研究のこと
11 日本語のルーツの一つとしての南島語族
12 「中西コレクション」その後
13 退官講演 遥かなるオーストロネジアン
14 退官メッセージ―彦根、来しかた行くすえ

追悼文・伝記
対談
あとがき―ブンガワンソロ

諷詠社HP書籍紹介 新刊:ある言語学者の回顧録―なな踰矩ゆく

投稿者:崎山 理 フランス語 1962年卒業

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(本の紹介)『さらばピカソ!』

訳者:鈴木光子(1961年/昭和36年仏語科卒)
元スイス政府観光局次長
著者:エティエンヌ・バリリエ
原題:『Ruiz doit mourir』
単行本:(ハードカバー) 292ページ
出版社:アルファベータブックス
ISBN: 978-4-86598-7 C0070
定価 :2000円+税

アンチ・ピカソを標榜する英国人画家、J.W.ゴッドワード(1861-1922)の日記の形で、本文中に一度もピカソという呼び名を登場させず、その本名であるパブロ・ルイス(ピカソは母方の名)で全編を貫くノンフィクション・ノベル。同時代の歴史的事実や人物を絡めて背景を形成する手法は、小説とは呼びがたい緊迫感がある。ルイスとの対決を求めつつも、彼の能力に心身共に追い詰められていく主人公ゴッドワードを描く。
表紙の美しい女性像は、J.W.Godwardの作品『ヴァイオレッツ・スイート・ヴァイオレッツ』。
また同じ著者と訳者に、実在の女性ピアニスト、ユジャ・ワンを巡って2人の音楽評論家がメール上で激論を戦わせる『ピアニスト』(2013年アルファベータ社)がある。

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投稿者: 鈴木 光子  フランス語 1961年卒業

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本の紹介『優れたリーダーはみな小心者である。』

著者: 荒川詔四 (株)ブリヂストン元CEO20171002
(インドシナ語学科 1968年卒)

単行本(ソフトカバー): 288ページ
出版社: ダイヤモンド社
言語: 日本語
ISBN-10: 4478066965
ISBN-13: 978-4478066966
発売日: 2017/9/22
定価: 本体1500円+税

ブリヂストン元CEOが贈る最強チームを生む25の鉄則
世界№1シェアを誇るグローバル企業ブリヂストン。
14万人を率いたリーダーは、なぜ「命令」を嫌ったのか?
・心配性こそ「先見性」のもと
・「不安」だから思考が深くなる
・「小心な楽観主義者」が最強   など
内向型人間こそ本物になれる

「繊細さ」を束ねて、「強靱」なリーダーになる。
単に豪胆なだけのリーダーは本物ではない。むしろ、内向的で繊細な人物のほうが、優れたリーダーになる可能性を秘めている。「部下の自尊心を傷つけない」「世界を臆病な目で見つめる」「最悪の事態を常に心配する」「あらゆるリスクに細心の注意を払って備える」・・・・・・・。こうした「小心さ」「繊細さ」を武器として活かすことができる人が、真に優れたリーダーへと育っていくのだ。
(帯より)

筆者は、若手社員時代に直面した困難を「心の持ち方」の転換により切り抜けた経験を原点に、海外を中心にさまざまなキャリアを経て、世界約14万人企業のトップリーダーを務められました。
「誠実であれ」、「仕事の主導権を握る」、「原理原則を死守する」、などのストレートな教訓だけでなく、「人格者ぶってみたところで、周囲には“馬脚”は丸見え」、「英語が自由闊達な議論を殺す?!」、などのユニークな視点も随所に登場します。
ビジネス書、リーダーシップ論の範疇にとどまらず、広い意味で人間の生き方のお手本となる1冊です。
行間から、著者の“細心大胆”かつ世界の多くの社員を“リスペクト”されたお人柄が滲み出ていました。
ぜひ学生さんはもちろん、若い同窓生の皆さまもお手にとられることをお薦めします。

(推薦者:髙橋 勝義 インドシナ語学科 1969年卒)

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『ロシア近現代と国際関係』著作出版

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 『ロシア近現代と国際関係』をミネルヴァ書房より9月10日に出版しました。近現代に焦点をあてながらもロシア国家の起源から今のプーチン時代までの歴史をわかり易く取り上げ、さらに冷戦、ポスト冷戦、対中関係、対日関係を分析しています。今年はロシア革命100周年、ロシア史を振り返る一つのタイミングかと思います。学生諸君のロシア史の教科書としても耐えうると自負します。定価4000円+税ですが、私に連絡いただければ、2割引きで入手できます。
email address; tak-oda@jcom.home.ne.jp

投稿者: 小田 健 ロシア語 1973年卒業

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新刊本『チェ・ゲバラと共に戦った ある日系二世の生涯』ご案内

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今年はキューバ革命の英雄チェ・ゲバラの没後50年。

ゲバラ最後の闘争の地となったボリビアで、ゲリラ部隊に属し、わずか25歳で命を落とし夢を断たれた日系ボリビア人がいました。

彼の名は、フレディ前村ウルタード。

政府と社会の迫害に遭いながらも実姉マリー前村が書きためてきたフレディの手記『チェ・ゲバラと共に戦った ある日系二世の生涯~革命に生きた侍~』(キノブックス、マリー前村、エクトル前村ウルタード共著)が、2017年9月22日(木)に全国書店で発売されました。

本書の日本語版初版は2009年(西語版は2006年)で、来る10月6日(金)に全国一斉公開される日玖合作映画『エルネスト』(阪本順治監督、オダギリジョー主演)の原案となりました。

訳者として、原書との出会いから著者やフレディゆかりの地へ訪問、そして再販、映画化に至るまで10年余り関わってきた作品で、今回ぜひ多くの方に知っていただきたいと思い、こちらに投稿させていただきました。

映画にも是非足をお運びください。どうぞ宜しくお願いいたします。

出版社(キノブックス)URL
http://kinobooks.jp/publication

映画『エルネスト』公式サイト
http://www.ernesto.jp

投稿者: 松枝(鈴木) 愛  スペイン語 2003年卒業

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本の紹介 『文藝別冊 米原万里』発売

米原万里さん表紙

 今月8日、私の編集した書籍『文藝別冊 米原万里』が発売いたしました。
天才ロシア語通訳者であり、優れた作家・エッセイスト、そして東京外国語大学ロシア語学科の卒業生でもあった米原万里さんを一冊で特集したムック本です。
貴重な単行本未収録エッセイなども多数収録。ご高覧いただけましたら幸甚です。

『文藝別冊 米原万里』
河出書房新社 刊
2017年8月8日発売
本体1,300円+税
244ページ
ISBN:978-4-309-97925-0
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309979250/

—目次—
◎巻頭カラー 米原万里アルバム
◎米原万里・発掘コレクション
・エッセイ
「ビリの超能力」
「忘れ得ぬ映画」
「叱る方も叱られる方も思わず笑ってしまうというのにどうやら効果的な叱り方」
・対談
山本美香×米原万里
ボリス・ポクロフスキー×米原万里
・スピーチ
誤訳のおかげで命拾いをした話
・翻訳
チョールヌイ 米原万里訳 風刺(「昔の風景」)
◎特別対談
福岡伸一×河野通和
ガセネッタ(横田佐知子) × シモネッタ(田丸公美子)
井上ユリ×宇野淑子
◎エッセイ他
亀山郁夫、沼野充義、斎藤美奈子、姫野カオルコ、上坂すみれ、小森陽一、ロジャー・パルバース、武田砂鉄 他
◎米原万里ブックガイド
◎略年譜

投稿者: 町田 真穂 チェコ語 2016年卒業

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会員よりご感想をいただきました。

本の紹介 『うたの揚力―現代短歌鑑賞一五五首』

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 著者は1972年に東京外国語大学アラビア語学科卒業後、商社勤務を経て中東専門シンクタンク等で勤務する傍ら、短歌を作り続けてきて、これまで九冊の歌集を出版し、現代歌人協会賞、日本歌人クラブ賞その他の賞を多数受けています。かつて本学で非常勤講師として教えた「短歌創作論」の講義がきっかけとなって誕生した「外大短歌会」からは、歌壇で注目されるような有力な新人も育っています。

その著者が短歌専門出版社のブログに一年間隔日で現代短歌の鑑賞を掲載してきたものを、この度それを一冊に纏めました。難しいという先入観のあるかも知れない現代短歌ですがが、この一冊は現代短歌の魅力とその奥深さを解き明かしています。

投稿者: 三井修 1972年 アラビア語卒業

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詩集『わが涙滂々 原発にふるさとを追われて』の英訳刊行

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福島第一原発事故から6年余り経ちました。この事故を人類の教訓として世界の人々やこれから生きていく次の世代に伝えるために、私は一つの詩集を英訳しました。原発事故でふるさとを追われた小島力さんは、福島県葛尾村で長年 郵便局員として働きながら、原発反対運動、労働運動に取り組みながら詩を書き続けていました。原発事故でふるさとに住めなくなり、彼の無念さを詩集に纏めています。この英訳版で海外の読者にも彼の詩を薦めたいと思います。
英訳版は原文の日本語も併録してあり、対訳の形式で表記されています。

詩集 『わが涙滂々(抄) 原発にふるさとを追われて』英訳版
小島力 著     野田説子 英訳
西田書店 発行 Tel  03-3261-4509
Fax  03-3262-4643
定価 1,400円+税
ISBN978-4-88866-612-1
A Selection of Poetical Works:
MY TEARS FLOW ENDLESSLY
Forced Out of HOUSE and Home by the Fukushima Nuclear Power Accident
Kojima Chikara, Noda Setsuko
Nishida-syoten
http://www.nishida-shoten.co.jp

投稿者: 野田(橋本)説子  ロシア語 1973年卒業

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本の紹介 『エフゲニー・キーシン自伝』

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 このたび、ようやくロシア語からの訳書を上梓する機会に恵まれました。英語版がもうすぐ刊行予定ですが、ロシア語版はいまだ確認できません。現時点では初にして唯一のキーシン氏自伝かもしれません。

『エフゲニー・キーシン自伝』
エフゲニー・キーシン著、森村里美訳
ヤマハミュージックメディア刊
2017年3月19日発売
本体2,500円+税(定価2,700円)
ISBN 978-4-636-93071-9
http://www.ymm.co.jp/p/detail.php?code=GTB01093071

世界的な天才ピアニスト、若き巨匠へとみずからを高め続けてきたキーシン氏。1971年にモスクワで生まれ、6歳で入学したグネーシン音楽学校で師事したアンナ・カントール先生が、生涯の恩師となり家族となりました。
高名無名の忘れ得ぬ人々との出会いと別れ。音楽だけではなく、文学、政治、民族問題など硬軟合わせ、めぐる想いが綴られます。ユダヤ人への心ない言葉に涙ぐむキーシン少年。ドイツの街角楽隊による熱演を前に、公演での自分の不完全燃焼に恥じ入り決意をあらたにする青年キーシン。スパイ小説もどきの謎を秘めた、遠縁にあたるキーシン卿。カラヤンにスヴェトラーノフにマルタ・アルゲリッチ。驚くほど率直な語り口で、音楽と人生への愛情と詠嘆と感謝が紡がれてゆきます。
ロシア、イギリス、イスラエルの3つの国籍を持つに至った経緯も、カントール先生の無二のすばらしさも、期待にたがわず丁寧に書きこまれます。校正も大詰めとなった春先、結婚予定のお知らせが入り、数行の追加原稿をいただいたことも忘れられません。
ピアノと楽譜の質感を漂わせる装丁にぜひ触れてみてください。アラムナイ文庫でもご覧いただけます。

インターネット上の調査だけではなく、紙の辞書も大いに引き、無限の教えをいただきました。編者に連なるのは在学中にお世話になりました飯田先生、新田先生、染谷先生。「翻訳するときはすべての単語を辞書で確かめる」との原先生の講読授業中のお言葉も幾度となくよみがえりました。格変化ドリルが恐ろしかった中澤先生がまとめあげられた2015年刊の辞典からも新たな視点をいただきました。
往事の自分はなんと不勉強であったことか、そしてなんと恵まれた環境だったにもかかわらず、直接教えを賜る機会をみずから逃していたか。黒すぐりの実を含んだような懐かしい苦さが胸の深いところに静かに広がるのです。

2017年6月3日

投稿者: 森村里美 ロシア語 1986年卒業

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