魂という通奏低音(本の紹介)

タイトル:『死と生についての五つの瞑想』
『魂について――ある女性への七通の手紙』
著者名:フランソワ・チェン
訳者名:内山憲一(フランス語学科1985年卒業)
出版社:水声社
定価:各2,000円+税

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昨年の秋から冬にかけて二冊の翻訳書を出しました。フランソワ・チェンの作品です。その名前から推察できるように中国出身ですが、フランスに帰化した文学者、一九二九年生まれで存命中です。苦労の末に獲得した言語で執筆した処女小説『ティエンイの物語』で、フランスの文学賞の中でもゴンクール賞に次いで著名な賞のうちの一つフェミナ賞を一九九八年に受賞、二〇〇二年にはフランス学士院を構成する五つのアカデミーの中でも四百年近くの伝統を誇り、終身制である四十名の会員は「不滅の人」と称えられるアカデミー・フランセーズにアジア系初の会員として迎え入れられるなど、現代フランスの詩人・作家として揺るぎない評価を得ています。

日本ではほとんど知られていませんが、邦訳はすでに二点ありました。みすず書房から刊行されている二つの小説『ティエンイの物語』『さまよう魂がめぐりあうとき』(いずれも辻由美訳)です。今回それにフランス文学の翻訳では定評のある水声社から刊行の拙訳二作がつけ加わることとなりました。『死と生についての五つの瞑想』、及び『魂について――ある女性への七通の手紙』です。

既刊の小説二作に対して、私が手がけた二作のジャンルはどう言ったらよいのか、実は訳者としても少し迷ってしまいます。『死と生についての五つの瞑想』のうち最後の瞑想はすべて、「変容した言葉」である詩という形で語られています。『魂について』の方は、部分的には小説のように読むことができます。一方はそれほど大人数ではない知己を中心とした連続講話をまとめたもの、他方は書簡体の作品です。結局二作とも、中国思想と西洋思想の交差するところに立つチェンの深い思索が、なによりも詩人であることを自認する人の美しい言葉で綴られている哲学的エッセーといったところでしょうか。

《以下はこちらよりお読みください。》

投稿者:内山憲一 フランス語 1985年卒業

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『飯山一郎最終講義 金正恩が統一朝鮮王になる!!』紹介

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著者名:飯山一郎・野崎晃市
出版社:銀河出版
出版日:2018年11月26日
価格:本体2000円+税

常に独自のユニークな世界情勢分析や、辛辣な評論を自身のブログ「てげてげ」に書き綴ってきた故飯山一郎氏と、東京外国語大学中国語学科1997年卒の野崎晃市氏の共著が出版されました。
2018年7月20日に逝去した飯山一郎氏の追悼記念として、飯山氏の未発表の原稿や仲間たちの追悼文などが収録されています。
第一部は、雑誌『スターピープル』に連載された「新日本国建設神話」。 第二部は、金正恩と北朝鮮の将来を予言した対談「金正恩が統一朝鮮王になる‼」。 第三部は、友人やファンから寄せられた追悼文などです。
飯山一郎氏と野崎晃市氏による対談「金正恩が統一朝鮮王になる‼」は、今後の朝鮮半島統一に向けての動きと、米朝首脳会談により世界の檜舞台に乗り出した金正恩の外交戦略を知る上で欠かせない情報が満載です。

目次

第一部 「新日本国建設神話」
第一話 国やぶれて 山河なし
第二話 「日本」という国名の秘密
第三話 『新日本国建国』の方法と知恵
第四話 『新日本国建国』の時、世界は?
第五話 『新日本国建国』は現在進行中!
第六話 山東省・慶雲県の汚泥まみれの戦場にて
第七話 数世紀に一度の大転換期に入った世界
第八話 二〇一七年二月十一日、日本は独立した!
第九話 〝考える葦〟になろう!
第十話  日本民族の繁栄を祈る!
第二部 「金正恩が統一朝鮮王になる!!」
第一講 金正恩の血筋を追え‼
第二講 朝鮮半島統一を巡る裏の争い
第三講 金正恩と核ミサイル
第四講 南北統一へのプロセス
第三部 「追悼・飯山一郎先生」
船は出てゆく想い出残る(稲村公望)
飯山史観を後世に遺す(亀山信夫)
飯山一郎先生と藤原肇博士(伊藤周太)
飯山一郎氏の思想は他の識者の思想とどこが違うのか(川村明)
飯山先生、心から、ありがとうございました。でもさようならは言いません(大江ゆみ)
飯山一郎礼讃(加藤厚志)
飲尿獣医と飯山一郎先生(佐久間稔)
志布志を訪ねて(安井三惠)
追悼 飯山一郎先生(魚津達哉)
飯山一郎という生き方・全国の同志に捧げる(日高三仁)

著者紹介
■飯山一郎
1946年1月17日栃木県生まれ。カリスマ・ブロガー、国際情勢アナリスト、発明家として活躍。3.11以降、ネットを通じて国際情勢に関する独自の情報を発信しながら、乳酸菌による健康維持や日本国の復興を呼びかける。著書に『横田めぐみさんと金正恩』(三五館)がある。2018年7月20日逝去。

■野崎晃市
1974年7月20日島根県生まれ。中国在住の宗教社会学者、日中近現代史研究者。1997年東京外国語大学中国語学科卒、1999年東京外国語大学大学院博士前期課程修了、2006年筑波大学大学院社会科学研究科博士課程修了。博士(文学)。

投稿者:野崎晃市 中国語 1997卒業

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自叙傳 一国際法学徒の幸運な半生 三好正弘

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昭和35(1960)年英米科を卒業し、慶應義塾大学大学院法学研究科で国際法を専攻して、修士課程3年博士課程5年という長い在籍期間を経てまとめた論文で、幸運にも、昭和44(1969)年第2回安達峰一郎記念賞を受賞し、国際法研究者の生活がスタートした。

愛知大学に昭和45(1970)年から勤務し、その年の夏オランダのハーグ国際法アカデミーのリサーチ・センターで2か月の条約解釈のセミナーに参加し、その3年後、ロンドン大学キングス・コレッジ法学部に英国文化振興会の奨学金を得て留学し、ハーグで指導を受けた同じ教授に師事して最初はM.Philというコースを1年、2年目はPh.Dコースを1年、リサーチ・ステューデントとして過ごした。この留学には家族5人全員で出掛けたが、日本から派遣されていた銀行マンや商社マンなどが引越しその他のことで会社の助けがあるのと違って、何もかも自分で処理するしかなかった。その代わり、現地の事情に合わせて反って豊富な経験をすることができた。住居はロンドンの南方のサリー州オールド・クールスドンの1戸建の家で、快適な田舎生活だった。

昭和55(1980)年5-6月には米国国務省の招待で、ガイド付きの1か月旅行という大名旅行をさせてもらい、ハーヴァード、イェール、コロンビア、ヴァージニア、プリンストンの各大学に著名な国際法学者たちを訪ね、国務省、国防省、国立公文書館等政府機関訪問も行い、また旧知の米国の友人たちにも再会し、見聞を広めた。

この同じ年の夏、ハワイの東西センターで「南シナ海の炭化水素資源の共同開発に関するワークショップ」に参加してコメントする機会があり、それを皮切りにその後毎年のように海外の海洋法関係の会議やセミナーに参加することになって、40数回にわたってこの種のワークショップやセミナーで報告を行った。海外の会議・セミナー等に参加したときは、必ず少し足を延ばして旅行を楽しんだ。訪ねた国は35か国ほどになる。

昭和63(1988)年4月から6か月、ハイデルベルクのマックス・プランク比較公法・国際法研究所で客員研究員としてロンドン大学Ph.D論文の仕上げの作業を行い、ドイツ各地を巡ったのも懐かしい。

この自叙傳は3人の娘たちと4人の孫たちに私の来し方を伝えることが主眼であったが、上記の各種経験を当時の手帳を参照しながら詳しく記録しておいたので、国際法に無関係の人にも楽しんでもらえるかと思う。参加・報告した会議・セミナー等のリストと、時局評論を含む随想数篇を付けておいた。

投稿者:三好正弘(英米語 1950年卒業)

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本の紹介:難民支援~ドイツメディアが伝えたこと~

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帯の文:2015年以降のドイツにおける難民受け入れの実情と変遷を、現地の新聞やブログをもとに紹介・解説。難民支援に対し否定的・消極的な見方が広まるなか、一市民に何ができるのかを問う。ベルリン在住の日本人ボランティアによるルポも併録。“異質の者を排除せず、ありのままの存在として認めること” 春風社 2018年8月31日発行

上梓の経緯:著者の一人(投稿者)は外語大在学2年目の秋(1968年)、全学ストの煽りを受け実質的なドイツ語学習を断念。そこで定年退職後、本学オープンアカデミーでドイツ語に再挑戦。ドイツ語新聞講読クラスやEUの言語問題を学ぶクラスの受講が契機となって、「難民支援」というテーマに関心を抱き、2年以上にわたりドイツメディアを追うことになった。追跡のメモを一冊にまとめたのが本書である。

ご一読いただき、ご意見を賜ることができましたら幸いです。

投稿者:松原好次 ドイツ語 1972年卒業 

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本の紹介「シンハラ語お役立ちフレーズ集」

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スリランカの伝統舞踊に出会ったことがきっかけで、スリランカの魅力を知り、現在、スリランカ関連書籍の出版社に勤務しています。

スリランカの公用語の一つである、シンハラ語の語学書がまもなく発売されます。
「旅行・会話ナビ スリランカ シンハラ語~お役立ちフレーズ集~」

シンハラ語の学習書は数があまりなく、いわゆる「教科書」的な語学書しか存在しませんでした。
本書は「頑張って!」「楽勝だね」「やれやれ」など、生活のふとした時に口をついて出るような表現を集めたフレーズ集という、今までにないシンハラ語学習書となっています。

スリランカカレーや世界遺産、アーユルヴェーダなど、日本国内においても近年注目を集めつつあります。
また、スリランカは昔からの親日国でもあります。
スリランカの魅力や文化を、たくさんの人に知ってもらいたい思いで、今後も活動していきます。

有限会社アールイーHP
http://www.reshuppan.co.jp/

投稿者: 曽根 朋佳  ロシア語 2008年卒業

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本の紹介『サバイバルボディー』

20180910

訳書『サバイバルボディー』が白水社より刊行されました。オランダの「アイスマン」ことヴィム・ホフ氏と彼の開発したトレーニングメソッドを怪しいとにらんだ著者スコット・カーニーは、正体を暴いてやろうとホフのもとへ乗り込むのですが……。

ヴィム・ホフ・メソッドの科学的検証にとどまらず、あえて過酷な条件下で自分の限界に挑む「エクストリームスポーツ」が一大ビジネスになっている状況にも光を当て、人類の進化の歴史も絡めながら、現代社会のひずみを多角的に浮かび上がらせていく、ユニークな一冊になっています。

スポーツやトレーニングに関心のあるかたはもちろん、そうでないかたにも興味を持っていただけましたら幸いです。

白水社HP
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b373583.html

投稿者: 小林 由香利  英米語 1989年卒業

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本の紹介「日本語びいき」

20180827

『日本語びいき』(中公文庫)

英米語科を卒業し、あれこれの寄り道を経て、日本語教師になりました。日本語を母語としない人たちに日本語を教え続けて35年、生まれたときから触れてきた日本語が、今もおもしろくてならない!と思う、しあわせな日々です。
言語のひとつとして「外から目線」で見る日本語は、ほんとうに魅力にあふれています。日本語教師としてのそんな発見のひとつひとつを、日本語ネイティブの方にこそ知っていただきたくて書きました。前著『日本人の日本語知らず。』(世界文化社)の増補文庫化です。
今や数々の賞を総なめにしている新進気鋭の絵本作家、ヨシタケシンスケさんが絵を担当してくださいました。文章とイラストの掛け合いもたのしんでいただきたい一冊です。
母校ゆかりのみなさまにお読みいただき、何かしらのご感想をうかがえましたら幸せです。

投稿者: 清水 由美 英米語 1981年卒業

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会員よりご感想をいただきました。

ピクンの花「金の言葉を話すお姫さま」

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タイの人々の心を映す民話

少女ピクントーンは、意地悪な母親と姉と三人での極貧の暮らし。母親は姉のみを可愛がり、ピクントーンには、水くみ、米つき、畑仕事などつらい仕事ばかりを言いつける。
ある晩、ピクントーンが川へ水くみに行った帰り道、老婆が現れ、水が欲しいと言う。暗い夜道の中、やっとのことで運んできた水を、惜しみなく与えるピクントーン。心やさしいピクントーンに老婆は、ある「霊力」を授ける・・・・

この民話に現れる老婆は、「ピー」という自然界に宿る精霊。「ピー」は人々の生活を守護するが、一方、不敬な行いには災いともたらすと言われる。タイの人たちは「ピー」に深い畏敬の念を持っており、常に心の底で「ピー」を意識しながら生活している。タイを訪れると、民家の庭先、ホテルの前、ビルの屋上など、街のいたるところに「ピー」を祀った小さな祠が立っており、その前で手を合わせる人々を目にする。この民話は、こうしたタイの人たちの心をよく映している。

最近、タイの小説や映画は、日本でもかなり紹介されてきているが、民話はまだ紹介されていない。本書はタイ文化、異文化理解のために貴重な資料であるとともに、子供たちにとっても、国際感覚を養う上で、また慈悲深い心の大切さを学ぶ上で大いに役立つものと思われる。
かわいいい少女の絵、爽やかなタイの風景の絵と相まって、すがすがしさを感じさせ、大人も子供も楽しめる絵本です。

作・画・翻訳:齋藤佐知子(1967年タイ語卒)

著者は大学、大学院を通じタイと日本の民話の比較、さらにミャンマー、ベトナム、カンボジアなどの民話の研究を重ねた研究者。長年英語教育にも携わり、現在、立正大学英語講師。

 紹介者:山中 義矩(1967年タイ語卒)

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米国にて「The Musubi Book」を出版しました

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東京海上火災保険にて16年間に亘り船舶保険業務に従事した後、単身渡米し、ホノルルのハワイパシフィック大学にて修士課程修了。2008年に同市内でおむすびデリを開業し、地元住民に日本のおむすび食文化の素晴らしさを広く伝えてきております。今般、日本のコメ文化や歴史、コメの栄養学的分析、おむすびマーケット情報といった周辺知識に始まり、御飯の炊き方、そして各おむすびのレシピまで、極めて広範なコンテンツを米国人向けに構成し、1冊の本にまとめました。米国Amazonにて取扱中です。

投稿者: 朝岡 学  朝鮮語 1989年卒業

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本の紹介 情報戦士の一分

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(目次)
1 はじめに 2 序章「さらば市ヶ谷台」 3 第1章私の生い立ち
4 第2章情報マンへの助走 5 第3章陸自中央資料隊の日々
6 第4章防衛省情報本部の日々 7 第5章情報活動25年を振り返って
8 終章軍事アナリストがみた中国 9 年表、おわりに、略歴

拙著は、2017年7月から2018年3月まで約9か月間で企画・執筆・編集したものである。原稿自体は、防衛省退職後の2013年頃から準備していたが、ある時代は大量に書き込んであるのに対し、別の時代はスカスカで「欠落」も多かった。問題は「骨子」(構成案)の作成だった。防衛省在職中は、ナントカ報告と言えば「骨子」の作成・御指導から始まるのが常道であったのに、いざ「自分史」を書こうとしたら逡巡して、なかなか上手くいかなかったのだ。しかし、良き編集者が付き、応援してくれたおかげで、原稿の「虫食い」状態は無くなり、拙著の完成・発刊に漸く至った。
拙著のキモ(要点)は、第5章と終章である。ここから読んでいただいて構わない。もしジャーゴン(小難しい専門用語)等分からないことがあったら第2章、第3章、第4章に戻って読んで確認して欲しい。そして、こんな奇妙奇天烈な経歴を持った人間って、一体どんな奴なんだと興味が湧いたら序章や第1章(ここに東外大時代が入っている)「はじめに」や「おわりに」にも目を通してもらいたいと願っている。
私は中国科卒業生なので、神田神保町の「内山書店」には学生時代を含め、今でもたまに顔を出している。この中国関係書籍専門店を立ち上げた内山完造氏には、著名な自伝『花甲録』がある。書名は、中国語で還暦になることを意味する「年登花甲」に由来するそうだが、私は今年まだ57歳(苦笑)。しかし、「私の歴史は私以外には持つ人は無いと云うただこの一つのことによって、私は書かねばならんと云う勇気を得たのである」という内山氏の言葉に励まされて自分史を書き上げ、自費出版して、先日は出版記念パーティーまで「自作自演」した。初版は、資金の都合等で何とか頑張って120部、間も無く完売する。増刷の予定はまだない(軍事アナリスト、国際問題評論家)。

投稿者:松本 修 中国語 1984年卒業

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