本の紹介 『こんなとき、どう言う? ハングル表現力トレーニング』

今年1月に、単著『こんなとき、どう言う? ハングル表現力トレーニング』が、NHK出版より刊行されました。同書は朝鮮語の基礎を学んだ人を対象としており、シチュエーションごとに表現パターンを学んでいく構成となっています。

職場で指導してきた学生が、この春に韓国外国語大学大学院に進学しました。3月の授業開始直後から、高度な表現力と発声のトレーニングを受けていて、付いていくのが大変なようですが、まだ若いので「飲みこみ」も速いだろうと思います。今後が楽しみです。

投稿者 : 辻 弘範 朝鮮語 1994年卒業

本の紹介「誘発地震・正邪の人災」

誘発地震表紙[1]

ウルドゥー語卒(1966年)の山崎隆治さんが、サスペンス小説を発表!
『誘発地震―正邪の人災』 (文芸社刊 定価1400円+税)11月15日発売

「皆さんは『誘発地震』という言葉をご存知でしょうか? この近未来サスペンスは、福岡市沖の玄界灘で、漁に出た親子が、正体不明の人骨を引き揚げる場面から始まる。見つかった北朝鮮のバッジから、人骨は工作員のものらしい。そして意外な方向へ物語は進み、読者をいつの間にか巨大な陰謀の世界へ引き込んでいく。富と正義のせめぎ合い。文明への痛烈な批判・・・。年末、年始は、初詣や騒々しいTV番組を離れて、読書三昧で過ごしてみてはいかがでしょうか? とにかく面白い書です。以下は、同期生の感想です。少し長くなりますが、ご一読ください。」

<外語・同期生からの推薦の言葉>
▲東北文化学園大学名誉教授(アジア経済)山崎恭平氏(外語ウルドウー語1966年卒)
3.11東日本大震災の恐怖を直に体験した仙台在住の私は、本書を読んでから『誘発地震』が発生する可能性を想定できるようになった。地震は自然災害だけでなく、本書で指摘しているように大量の地下水くみ上げや地下資源の乱開発等の人工災害でも起こるであろう。そして、その危険性を逆手にとって巨利を目論む国際資本が登場して謀略や陰謀を繰り広げ、国際サスペンス小説としての面白さに加えて近未来小説のテーマの問題意識もある。500ページ近い長編が読み出すと一気に引き込まれるのは、外語卒業後新聞記者として世界を相手に磨いてきた洞察力と知見にあふれ、小気味良い文章力と構想力だ。

▲桜美林大学名誉教授(米国経済)瀧井光夫氏(外語ウルドゥー語1967卒)
数年前に本人から小説を書いていると聞いたが、まったく音沙汰がなかった。諦めたかと半分思っていたが、何とも素晴らしい作品が完成した。面白いだけではない。「誘発地震」が根拠のない話ではないことを知って恐怖も感じる。物語は福岡から東京、サンフランシスコ、ブエノスアイレス、ドバイ、マンハイムと世界大に展開する。新聞記者と編集者としての長い経験からか、人間の描写にも科学的な説明にも舌を巻く。温厚な著者の外見からは伺い知れない筆力。これは、決して著者のいう「妄想」の物語ではない。より多くの人に読んでほしい傑作である。

▲元国士舘大学大学院客員教授、元駒沢女子大学教授(国際政治) 渡邉光一(外語ヒンディー語 1966卒) インダス会会長、東京外語会副理事長
F・フォーサイスを髣髴とさせる構成と筆致。アガサ・クリスティばりの緻密な展開。卒業後、西日本新聞記者として活躍した筆者が、ソウル特派員などの海外経験や幅広い科学知識を駆使して取り組んだ処女作である。物語のテーマは、地球の富を牛耳る超富豪たちの陰謀である。彼らは今世紀、ついに国家体制の崩壊を狙い、福岡サミット開催を阻止しようと策略をめぐらす。グローバル化のなかの国家のあり方、貧富の格差拡大など、我々が今直面する大きなテーマを直視しながら、大団円に近づく。著者の分身と思われる主人公は、はたして孤高の戦いに勝利するのか?結論は読んでからだ!

 

本の紹介「新カラマーゾフの兄弟」

前東京外語大学長の亀山郁夫氏の初小説が刊行されます。西ヶ原時代の外語大が主要な舞台の一つとなっているノンストップミステリー巨篇です。あの沼野充義氏が「常人の業ではない。亀山郁夫によるドストエフスキー殺しだ」とまで絶賛する、文学シーンで今年1番の話題作です。卒業生の皆様は、是非一度お読みください。感動すると思います。もし、人生でもう一冊しか本を読まないとしたら、必ずこれを読んでいただきたいという本です。いまや失われつつある“文学の愉しみ”のすべてがここにはあります。

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書名  『新カラマーゾフの兄弟』上下二巻
著者  亀山郁夫
出版社 河出書房新社
定価  上巻 本体1900円+税 下巻 本体2100円+税
発売日 2015年11月20日

内容紹介
ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』は未完だった。予告されながら作者の急死で書かれえなかった「第二の小説」は多くの研究者により空想されてきた。光文社文庫より刊行されミリオンセラーともなった『カラマーゾフの兄弟』(全5巻)の訳者でもある亀山郁夫氏が、正編と続編を合体させて、現代日本を舞台に完結させたのが本書だ。亀山氏の師であり、東京外語大学長でもあった故・原卓也氏への愛と葛藤、師への父殺し……亀山氏による精神的自伝でもある本書には、本来文学が書くべきすべてのエッセンスが籠められている。また、しばしば描かれる失われた西ヶ原校舎の光景は美しく、外語大卒業生にとっては必読の書となっている。

亀山郁夫『新カラマーゾフの兄弟』(河出書房新社)刊行記念「亀山郁夫× 中村文則 ドストエフスキー超入門対談」が開催されます。
○日時:12月1日(火)19:00~20:30(開場18:30~)
○場所:青山ブックセンター本店
○詳細:‪http://www.aoyamabc.jp/event/karamazov/‬

投稿者 吉田久恭    ロシア科  1987年卒

翻訳書の紹介 『K 消えた娘を追って』

消えた娘を追って

このたび久しぶりに翻訳書(原作ポルトガル語)が刊行されましたのでお知らせいたします。

書名    『K 消えた娘を追って』
著者    ベルナルド・クシンスキー   訳者  小高利根子
出版社   花伝社
定価    本体1,700円+税
発行    2015年10月15日

ブラジルの軍事政権下、軍部に拉致された娘を捜す父親Kの物語。ユダヤ系ポーランド人でブラジルに移住したKは喪失感と良心の呵責に苛まれながら娘を捜し求めます。
失踪者家族たちの訴え、娘や婿の手紙、軍部側の動き、そしてなんらかの形で事件に関わった人々の思いが、短編小説のような29の章で語られ、まるでひとつの合唱のように響き合って、少しずつ全貌が明らかになる、という筋立て。事実に基づいた小説です。
長年関わってきたアムネスティ・インターナショナルがこの事件にグローバルな救援活動を展開し、日本支部も設立後最大のキャンペーンを行ったことを「解説」に詳しく書きました。

・「ダブリン国際文学賞」(一作品に対する賞としては世界最大)ノミネート作品

言論の自由を完全に奪われたブラジルの軍事政権下で起きた出来事を、今の日本の状況と引き比べて読んでくださる方が一人でも多いことを願っています。

投稿者 小高利根子(旧姓 保田)    英米科  1968年卒

本の紹介 THE LITERATURE OF NATURALISM

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著者: 本間 賢史郎

書名: THE LITERATURE OF NATURALISM
An East-West Comparative Study
Revised and Enlarged Edition

制作: 丸善京都出版サービスセンター

発行: 2004年9月13日

価格: 4,762円 + 税

フランスで生まれた自然主義文学は明治中期に日本に紹介されたが、この国の風土になじめず、同じ根から生まれた英米の自然主義文学と異なる独自の発展をして参りました。本書はその過程を詳細かつ具体的に論じたものです。

投稿者 :本間 賢史郎 英語 1946年卒

本の紹介 「ペトロフ軍医少佐」と「ペリリュー島へ」

ロシア語1953年卒 田谷榮近氏(1928-2012)の著書をご紹介します。

田谷氏は第二次世界大戦の戦中に旧満州国哈爾濱学院本科で学ばれ、戦後帰国後は東京外国語大学ロシア語科に編入学・卒業されました。中学・高校で英語教師を校長退職まで勤務、退職後は予備校で英語講師として教職を続けられました。
1972年、終戦直後の北朝鮮での同朋救済活動において外務大臣表彰状授与。
その後、ペンネーム「田所喜美」の著者名で、ご自身の体験に基づく題材を中心に執筆活動を始められます。著書に、「ペトロフ軍医少佐」、「胸痛む」(第11回長塚節文学賞短編小説部門優秀賞)、短編集「ペリリュー島へ」等。
2012年、正六位 瑞宝双光章授与。

「ペトロフ軍医少佐」田所 喜美 著  (自費出版)

book1

・舞台は第二次世界大戦直後の北朝鮮咸興市の発疹チフス病院。極限状況の中で死の恐怖にさらされていた日本人避難民について、少しでも犠牲を少なくしようと必死に努力した病院長ペトロフ軍医少佐の人道主義者としての行動が、その語学力を買われ通訳となった真家青年(著者の投影)の目を通して描かれています。

短編小説集「ペリリュー島へ」田所 喜美 著 火山地帯社

book2

・自閉症の生徒と、彼をやさしく見守る定年間近の中学校校長のふれあいを描いた「パラボラアンテナの見える丘で」、小学校時代の恩師が戦死したパラオ諸島へ慰霊の旅の中で思い出を辿る表題作「ペリリュー島へ」他、どんなに厳しい状況下でも一貫して人間愛にあふれた主人公の温かい眼差しが感じられる全6編の短編小説集。

書店での入手は困難ですが、東京外国語大学・東京外語会プラザ内の、「アラムナイ文庫」に収蔵されています。機会があればぜひご一読ください。

投稿者&紹介者: 井上桂子 ドイツ語 1987年卒

翻訳書の紹介「蜜と塩」(聖書が生きる生活エッセイ)

蜜と塩 表紙

此の度、翻訳書が刊行されましたので、ご案内申し上げます。
ミュリエル・ハンソン著:「蜜と塩」(聖書が生きる生活エッセイ) 竹内和子・野口直枝共訳
出版社 イーグレープ社
定価 本体1,500円+税
戦後の10年間を日本でキリスト教の宣教に携わったアメリカ人女性宣教師が書いたエッセイ集です。日常の些細な出来事を通じて、神様の御言葉に思いを巡らせ、神の奥義が示されます。一つ一つのエッセイは誰もが経験するようなささやかな事柄から始まり、面白く読んでいくうちに、いつの間にか、深い思索の領域へと誘われます。全部で117章ありますが、どれも短くて、どなたでも、ちょっとした時間に気楽に読んでいただけると思います。
是非ご一読を!

投稿者: 竹内(村勢)和子 英米科 1968年卒