本の紹介 「ペトロフ軍医少佐」と「ペリリュー島へ」

ロシア語1953年卒 田谷榮近氏(1928-2012)の著書をご紹介します。

田谷氏は第二次世界大戦の戦中に旧満州国哈爾濱学院本科で学ばれ、戦後帰国後は東京外国語大学ロシア語科に編入学・卒業されました。中学・高校で英語教師を校長退職まで勤務、退職後は予備校で英語講師として教職を続けられました。
1972年、終戦直後の北朝鮮での同朋救済活動において外務大臣表彰状授与。
その後、ペンネーム「田所喜美」の著者名で、ご自身の体験に基づく題材を中心に執筆活動を始められます。著書に、「ペトロフ軍医少佐」、「胸痛む」(第11回長塚節文学賞短編小説部門優秀賞)、短編集「ペリリュー島へ」等。
2012年、正六位 瑞宝双光章授与。

「ペトロフ軍医少佐」田所 喜美 著  (自費出版)

book1

・舞台は第二次世界大戦直後の北朝鮮咸興市の発疹チフス病院。極限状況の中で死の恐怖にさらされていた日本人避難民について、少しでも犠牲を少なくしようと必死に努力した病院長ペトロフ軍医少佐の人道主義者としての行動が、その語学力を買われ通訳となった真家青年(著者の投影)の目を通して描かれています。

短編小説集「ペリリュー島へ」田所 喜美 著 火山地帯社

book2

・自閉症の生徒と、彼をやさしく見守る定年間近の中学校校長のふれあいを描いた「パラボラアンテナの見える丘で」、小学校時代の恩師が戦死したパラオ諸島へ慰霊の旅の中で思い出を辿る表題作「ペリリュー島へ」他、どんなに厳しい状況下でも一貫して人間愛にあふれた主人公の温かい眼差しが感じられる全6編の短編小説集。

書店での入手は困難ですが、東京外国語大学・東京外語会プラザ内の、「アラムナイ文庫」に収蔵されています。機会があればぜひご一読ください。

投稿者&紹介者: 井上桂子 ドイツ語 1987年卒