「戦争と外語生プロジェクト」活動開始


一橋祭での戦没学生資料の展示模様(2019年)

1943年(昭和18年)10月21日、降りしきる雨の中、神宮外苑で出陣学徒の壮行会が催されました。あの独特の甲高い声で万歳を三唱する東条英機首相と、「抜刀隊」が演奏される中で小銃を肩にかけて隊列を組んで行進している学生たちの映像は今でも私の脳裏に焼き付いています。しかし、何故かこの光景と外大とは無関係のように思っていました。その理由の一つが、当時は東京外国語学校という名称だったことにあるのかも知れません。

昨年の「外大9条の会」の年次総会終了後の懇親会で、一橋大学を卒業し勤務先を退職した後、本学大学院でドイツ緑の党の安全保障政策をテーマに研究した本会会員の竹内雄介さんから外大でも出陣学徒について調査したらどうか、との提案を受けました。竹内さんは出身校である一橋大学の戦没学生について調査し、その結果を大学祭(一橋⦅いっきょう⦆祭)や国立市の施設で発表するなどの活動をしています。

この提案を受け、立石前学長に関連部署を教えてもらい、文書館の存在を知りました。そして昨年9月末に文書館とコンタクトし、種々有意義な資料の提供を受けました。この時点ではどのように具体的な行動を展開していくのか定かではありませんでしたが、本年2月末に以前本会の年次総会時の記念講演で講演していただいた本学大学院総合国際学研究院の中山智香子教授に相談したところ、今年は戦後75年という一つの節目の年でもあり、こうした活動は有意義だということになりました。そして、本年秋の外語祭に向けて中山教授のゼミ生も巻き込んでプロジェクトを立ち上げようということになりましたが、コロナ禍に見舞われ、外語祭もオンライン開催ということになってしまいました。

こんな状況下で本年9月5日、三鷹市生涯学習自主グループ主催による講師派遣事業が行われ、第一部として中山教授による「コロナショック2020の示すもの」という演題の講演に引き続いて、第二部でオーストラリア映画『アンボンで何が裁かれたか』(1990年)が上映されました。この映画は第二次大戦中の日本軍兵士によるオーストラリア軍兵士への蛮行を裁くオーストラリア軍による軍事裁判がテーマになっております。その主要な登場人物の一人が1942年に英語部貿易科を卒業した(従って厳密な意味では「学徒兵」ではない)日本海軍の将校です。他にも日本側の主要登場人物として藤田宗久さんが弁護人役で出演しておりますが、藤田さんは1968年に本学ロシア語科に入学し、1973年に卒業した後、演劇界に身を投じ、今は演劇劇団「円」に所属され、舞台を中心にテレビ、映画でも活躍されています。いずれにしても学徒出陣により70名近くの方々が命を落とされ、その意味で外大も学徒出陣とは無縁ではありません。

この講演会には「外大9条の会」の会員に加えて、中山ゼミの大学院生が10名近く参加しましたが、彼らもこの映画を観ながら戦時中の外語に思いを馳せたことと思います。本プロジェクトはこの映画の上映を皮切りに、さらに着実に活動を前進させることになりますが、ご興味のある方は中山教授とコンタクトされるとよろしいかと思います。

中山教授のメールアドレス: nakac@tufs.ac.jp

投稿者: 鈴木 俊明 スペイン語 1972年卒業

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