満10歳になった外大9条の会、記念講演は西谷修さんで


20170703_9条の会 西谷氏

東京外語大・九条の会は誕生して満10年を迎えました。2007年2月1日発行の『東京外語会会報』第109号の巻頭言に西村暢夫さん(外I1956)が「平和憲法を世界に輝かそう」という一文を寄せましたが、この呼びかけがきっかけで本会が誕生しました。誕生当座は2~3年もすればこのような会の存在意義はなくなるだろうとも考えておりましたが、これが全く根拠のない楽観そのものであったことは現状を見れば火を見るより明らかです。本会の活動は年に3・4回の会報発行、そして年2回の講演会を中心に展開されておりますが、年次総会を府中キャンパスで行うようになったのは2010年からです。

本年の総会は6月3日午後1時から、昨年と同じ研究講義棟115大教室で行われました。涌井さん(外C1971)から昨年度の活動経過ならびに収支報告がなされ、続いて今年度の活動計画・予算案が提示され、いずれも拍手で承認されました。そして小休止を挟んで午後2時から本学名誉教授で現在は立教大学大学院特任教授を務められている西谷修さんに「トランプ時代の日米関係」という演題で講演していただきました。時として聴衆を笑わせながら深刻なテーマについて適格な解説をしていただきましたが、本題についての要約は以下のようになります。

トランプは地球温暖化防止を目指すパリ協定からの離脱表明に際して「パリ協定は米国の雇用を減らし、経済成長を鈍らせる。中国、インドは石油をどんどん使っていいとして不公平だ」と述べている。しかし、これは「オルタナ・ファクト」だ。パリ協定は産業化の過程という歴史的経緯に立脚し妥協点を考慮して成立したものだ。誰かが得をすれば、誰かが損をする。アメリカをはじめとする先進国は自然から天然資源を略奪し、商品に作り変えて販売し、金儲けをした。これが文明のプロセスであり、産業化のプロセスだ。これまで一番略奪してきたのはアメリカだ。いずれにしてもその結果自然が反乱し、人間が安心して地球に住めなくなったという反省に基づいてパリ協定が成立した。
第二次世界大戦後「アウシュビッツはなかった」とか「アフリカの植民地はフランスによって豊かになった」といった「歴史修正主義」が一部で公然と唱えられたが、日本でも最近こうした傾向が顕著になっている。いわく「戦中はよかった」「日本の戦争は悪くなかった」と。国家機関だった時代を取り戻そうとする神社本庁と日本会議は「戦後レジームからの脱却」を目指す安倍首相を応援している。
こうしてトランプ政権も安倍政権も権力の私物化を進め、社会的・歴史的規範などを「オルタナ・ファクト」で潰しているところに共通点を見出すことができよう。

参加者からは「今とても大変な時でどうしたらよいのか分からない状況だけれど、話を聞いているうちに問題点が整理されてきた」といった内容の感想が多数寄せられました。西谷さんには午後5時からの「ホールダイニング」と呼ばれる円形食堂での懇親会にも出席していただきました。懇親会は午後7時ころ散会しましたが、昨年とは異なり、出席者はそれぞれまっすぐ帰路に就いたようです。

昨今の目を覆いたくなるような現与党の劣化、西谷さんに言わせれば「改憲派なり保守派なりの政策が受け入れられ、多数を占めてその意見が通るならまだいい。だが、今の日本はそうではない。統治機構が腐った連中、その仲間内によって握られてしまっている」状況下での日本国憲法改変の企み、この流れを阻止されんと思われる方は下記までご連絡下さい。

連絡先: (Eメール)  tufs_peace9@yahoo.co.jp

投稿者: 鈴木 俊明  スペイン語 1972年卒業

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“満10歳になった外大9条の会、記念講演は西谷修さんで” への1件のコメント

  1. 9条の会のつどいの報告、ありがとうございます。北海道に住んでいるのでなかなか参加する機会がないので、ウェブでみられるのはありがたいです。今後も、9条の理念を世界に広めるために、地元でがんばっていきます。

    高城 由香里 日本語科 1992年卒業