新刊紹介『カフカエスクを超えてーカフカの小篇を読む』

 

前著(『ことばへの気づきーカフカの小篇を読む』春風社、2021年)に引き続き、小篇を20ほど読みながら、周りの世界を眺めてみました。その際、カフカエスク(不条理な、理不尽な)という概念だけで全ての作品を読み解くことは困難であると考え、カフカがノートや日記に文章を記すとき、どのような切り口で創作に臨んだかについて、以下3つの視座を設けてみました。

(1)現実と非現実の境を行き交う
(2)脇に身を置いて眺める
(3)終わらないように終わる

今回読んだ小篇は・・
(第一部)「商人」「天井桟敷にて」「隣人」「夜に」「雑種」「家父の心配」
(第二部)「小さな寓話」「根気だめしのおもちゃ」「もどり道」「乗客」
「はげたか」「ポセイドン」「セイレーンたちの沈黙」
(第三部)「こま」「皇帝の使者」「出発」「新しいランプ」「中庭の門をたたく」
「掟の門」

アカデミックな論文ではなく、よしなしごとを綴ったエッセイ集です。外語会プラザのアラムナイ文庫に寄贈させていただきました。前著とともに、ご一読いただけたら幸いです。

書名:『カフカエスクを超えてーカフカの小篇を読む』
著者:松原好次
出版社:春風社
出版日:2023年4月28日
定価:3100円+税
ISBN:978-4-86110-846-4

投稿者: 松原好次 ドイツ語1972年卒業

本投稿へのご意見、ご感想等はこちらまで

国内スリランカ料理店ガイドを出版します

お世話になっております。私が勤める出版社でこの度、日本国内のスリランカ料理店やセイロンティーを扱うお店を紹介する書籍を出版することになりました。

昨今の日本ではカレーが人気。各種メディアにも取り上げられ、ちょっとしたブームになっています。そういった機運にも後押しされ、ここ数年でスリランカ料理店も全国各地に出店し、今やお店がない県を数えた方が早い、という状況になってきました。
スリランカ料理の面白さは、家庭やお店によって味が全く違うことにあります。どのお店もとってもユニークで2つと同じ味はありません。本書では料理はもちろん、オーナーさんやスタッフさんのお人柄も含めて、スリランカ書籍の出版社として胸を張って「オススメできる」お店を紹介しております。カレー店ガイド書籍や雑誌は増えてきましたが、スリランカだけの一冊は日本初になると思います。

スリランカにおける宗教と食文化の関わりやセイロンティーの魅力について、スリランカ料理に使うスパイス図鑑など、ガイドだけではなく、スリランカとその食文化の解説ページも充実させました。各地のお店の皆さんにご協力いただいたコラムやインタビューなどもあります。掲載店舗の中には通販やお取り寄せOKのお店も多くありますので、近くにお店がないという方もお楽しみいただけると思います。

『カレーと紅茶はスリランカ』
発行日:2022/11/25
定価:¥1,800-(税抜)
出版:アールイー

『カレーと紅茶はスリランカ』。些か挑戦的なタイトルになっております。
人気はありつつもまだ「知る人ぞ知る」感のあるスリランカカレー。そして最近の若い方はセイロンティーの「セイロン=スリランカ」であることを知らない人も多いようです(これを知った時は結構ショックでした)。
様々な反応があることは承知の上で、スリランカの大事な2つの食文化を国名と共にたくさんの人に覚えていただきたいと願い、このタイトルとなりました。

投稿者: 新井 トモカ ロシア語  2008年卒業

本投稿へのご意見、ご感想等はこちらまで
(会員よりご感想をいただきました。)

「オペラ・トーク」―フランス・オペラ 『ぺレアスとメリザンド』―

この度、フランス人ドビュッシーの唯一のオペラ 『ぺレアスとメリザンド』 が7月に新国立劇場オペラ・パレスで上演され、それに先立ち、「オペラ・トーク」のライブ配信が行われました。(2022年6月25日)

新国立劇場オペラ芸術監督大野和士氏が自ら指揮を務めた、日本でのフランス語による貴重なオペラ上演は、オペラ・ファンにとっては大変意義のある、興味深いイベントになりました。因みにオペラとは、イタリア語で「作品」の意味とのことです。

このオペラ・トークは大野和士氏が司会進行を務め、本学出身の村山則子氏(F1968/昭43) と川竹英克氏(F1977/昭52) ご夫妻(奥様はフランス人のジョジアーヌ・ピノン氏)が招待・参加されています。

トークの進展に応じて、アンチ・ワグネリアンになったドビュッシーが、フランス語によるフランス音楽的なオペラを目指し、当時のフランス象徴主義演劇を代表するメーテルランクの戯曲をいかにオペラ化したか、その歴史的文化的背景を説明。続いて歌手の方たちが各場をピアノ伴奏で演奏し、オペラの中に表される水、洞窟、薔薇、長い髪などの象徴について各氏が解釈、意見を適宜加えて行くものです。イタリアやドイツのオペラとの対比や音楽性についての話も聞けて、全くの素人・門外漢の私にとっても大変興味深く、オペラ理解の参考になりました。

このオペラ・トークは新国立劇場の「You Tube」アーカイブ配信で見ることが出来ます。

URLはhttps://youtu.be/i06pWrV1WfIです。

三氏のプロフィルを簡記し、村山氏の関連著作も一部画像で紹介します。

〇大野和士氏 新国立劇場オペラ芸術監督、指揮者
東京藝術大学音楽学部卒。1987年トスカニーニ国際指揮者コンクール優勝。バーデン州立歌劇場音楽総監督、ベルギー王立歌劇場音楽監督、リヨン歌劇場首席指揮者などを歴任。
現在、東京都交響楽団音楽監督、バルセロナ交響楽団音楽監督、東京フィルハーモニー交響楽団桂冠指揮者も務める。
2017年フランス芸術文化勲章「オフィシエ」、2010年文化功労者など受賞多数。
2022年9月、ブリュッセル・フィルハーモニック音楽監督に就任予定。

〇村山則子氏   音楽評論、また村山りおんとして詩人・作家
東京外国語大学フランス語科1968年卒、東京藝術大学大学院音楽研究科博士課程修了。
『石の花冠』で第5回小島信夫文学賞受賞。研究書、詩、小説の著書多数。 絵画の個展も開催。
東京外語会「会報便り」ご参照。
*『雲井の余所』村山りおん著 2021.2.2
*『ラモー 芸術家にして哲学者』 講演会 2018.8.20

〇川竹英克氏   フランス文学者 明治大学名誉教授
東京外国語大学フランス語科1977年卒、同大学院修士課程修了。
パリ第三大学修士課程修了。専門は20世紀フランス文学。
NHKラジオ第二放送帯番組「まいにちフランス語」で、メーテルランク原作ドビュッシーのオペラ 『ペレアスとメリザンド』 の台本を半年間かけて丸ごとテキストとして使用。
仏友会会報誌LA NOUVELLE No.28 に掲載記事「フランス人は合理的か」
(2022年4月1日号)

投稿者:金澤脩介  フランス語1968年卒業

本投稿へのご意見、ご感想等はこちらまで

ブラジルで最も権威ある文学賞ジャブチ賞受賞作の初邦訳

これは私が翻訳、今年2月に文芸社より上梓した「大使閣下」の帯の文言です。作者エリコ・ヴェリッシモは、20世紀ブラジル文学界を代表する世界的文豪でその作品は、国境を越え世界中で愛読されていますが、本書出版の編集者ですら彼の名前は初耳とのことで、日本ではほとんど知られていません。

サマーセット・モームの様なストーリーテラーの彼の作品は、読者を惹きつけ、文学、美術、音楽、哲学、歴史、政治と多岐に亘る彼の博識は、その作品に幅と深みを加え、更に作品の底流には常にヒューマンな眼差しがあります。本書が、日本の読者に彼の作品の面白さ、迫力、魅力を伝える一助になれば幸いです。

またエリコ・ヴェリッシモの魅力的作品群は、短編小説、長編小説、児童文学、紀行文、エッセイと多義にわたり将に宝の山ですが、そのほとんどは日本に紹介されておらず、本書を機に更なる作品の翻訳に挑戦される方が現れればと願っています。

東京外国語大学付属図書館に寄贈させて頂きました。

書名:大使閣下
著者:エリコ・ヴェリッシモ
訳者:澤木忠男
出版社:文芸社
定価:本体2,100円+税

投稿者:澤木 忠男 ポルトガル語 1963年卒業

本投稿へのご意見、ご感想等はこちらまで