本の紹介「ロシア出版文化史ー十八世紀の印刷業と知識人-」

原著者ゲーリー・マーカーは現在活躍中のロシア史研究者である。博士論文として執筆された本書は、序章と八章から成っており、各章のタイトルから、大まかな内容が把握できる。第一章「印刷術とピョートル革命」、第二章「教会とアカデミー」、第三章「学校と出版業者」、そして第四章が「個人出版業の出現」。ここまでが前半で、印刷・出版業を担った主体を時系列で紹介する内容になっており、十八世紀ロシアの出版状況が時代を追って詳述されている。後半の四章は、次のタイトルが示すように、各々が独立したテーマを扱っている。第五章「地方における出版業」、第六章「ロシアの書籍販売業」、第七章「書籍販売と読書」、そして第八章が「検閲」。ロシア各地の出版状況、書物の販売状況、人々の読書傾向、そして統治者による検閲の実態が、ノヴィコフやカラムジンなどの知識人の動向と合わせて、後半の四章で詳細に描写されている。こうして本書は印刷業の発展に関する説明に終始せず、印刷業をプリズムとして十八世紀のロシア史全体を見渡すことに成功しており、特異で興味深いロシア社会史になっている。
2014年7月刊行。成文社。定価4800円+税

投稿者 : 白倉 克文 ロシア語 1968年 卒業