72侯は、菜虫化蝶(はむしちょうとなる)。
その昔、坂本九ちゃんの相手役だった森山加代子さんのヒット曲
「白い蝶のサンバ」(1970年)。
1977年、米国サンフランシスコの日本人町の酒場「歌舞伎」
のママさんが十八番にしていた歌だった。
朝2時の看板近くになると、
決まってママさんのこの歌がフィナーレ曲、
「さあ企業戦士の皆さん、
本日もご苦労様、明日に向かって元気に歩んで」
とエール飛ばしてくれた(時間帯はもうすでに翌日だが)。
森山加代子さんの歌詞がリフレーンの中、
若いピアニストとママさんによる
最後の蝶舞ダンスが終わり、GM製のフルサイズカーで帰宅する。
当時は飲酒運転の規制はあって無きがごとし。
サンフランシスコの夜は今日も無事にくれゆく・・・
ヤマトの季節は、菜虫化蝶(はむしちょうになる)の頃合。
白蝶―日本の春の風景を代表する。
モンシロチョウかモンキチョウが菜の花の間を
ふわりふわり飛んで見せる。まさに大和の春だ。
和暦の先生曰く。
モンシロチョウは、外来種(奈良時代)。
ヤマト国の在来種は、スジグロシロチョウですよと
教えてくれる。
紋があるのと、黒筋があるのと
シロートの私らには、よう区別がつきませんな。
柔な虫の代表であるこの白蝶は、アブラナ科の食草が命。
はらぺこか、食いしん坊の青虫君が
キャベツ、ブロッコリー、小松菜、大根などの葉っぱを食べる。
害虫なのかい。
他の虫には毒性となるアブラナ科に目を付けたのがこの蝶の強さ。
聴けば、今ヒト族が、特に長寿健康志向の
ヤマト国のお人たちが、健康コンサルタントの多くが、
アブラナ科を食しなさい、ブロッコリ―(トマト、玉葱)が
最強野菜ですぞとTV健康番組などで語ってくれる。
そうか、白蝶たちは1000年以上前から
この健康食草に気が付き、命を繋いできたという。
我らヒト族が、ブロッコリーが代表格になった健康食材に
気が付いたのは最近のことだ。
この朝、
NHKの自然特集番組で、阿蘇山の草原で絶滅危惧種の命を
繋ぐ蝶の話があった。ご覧になった方も多いでしょう。
オオルリシジミ(蝶)。
こちらは、くらら(眩草;クララソウ)を食草として、
命を繋いでいる。
クララソウも毒性が強く、一部の蝶以外には忌避される。
また豆科というから、いかにも栄養(タンパク質)たっぷりな
食草ではないか。阿蘇山の草原を守る人たちの手になる「野焼き」に
よってクララソウも確保され、オオルリシジミの命が
カルデラ草原の中でつながる。
はかない命の蝶の強さよ。
古代カワヒラコの名前(「てふ」は平安時代からという)
を持った、ひらひら飛びながら花の間を飛び交う蝶たちを
新古今和歌集の歌人は
「うすく濃き
苑の胡蝶はたはぶれて
かすめる空に春ぞ暮れゆく」と詠った。
江戸期の良寛さんは
花と蝶の関係を、「花は無心にして蝶を招き、蝶は無心に花を尋ぬ」
と自然の摂理に従い生きる道を詠う、かつて仏陀が
六年間の瞑想ではなく、座禅姿から解放されたのちに
自由な自然の営みの中で悟り、真実の人に相成った。
凡夫の身には、森進一のヒット曲
「花と蝶」、花が女か男が蝶かの歌詞の方が判りやすいが。
さあ桜の季節到来を前に、しばし
蝶の舞を楽しみながら、そして桑港の「歌舞伎」ママさんの
ステキな蝶の舞振りも思い出しながら、この春のひと時に浸りたい。
(佐々木 洋 英語1973年)