保阪正康さん講演、立ち見も出るほど


5月31日は当たって欲しくないと願っていた天気予報通り、午前中は強雨にも見舞われましたが、この悪天候にもかかわらず、午後2時からの大会議室で行われた保阪さんの講演には200人近い聴衆が集いました。この中には『東京外語会メールマガジン』を見て参加された本学卒業生も5人ほどいました。用意した椅子では足りず、座れない人も出るほどでした。

保阪さんは昭和史研究の第一人者でノンフィクション作家でもありますが、書籍の執筆、或いはマスメディアへの頻繁な登場により知名度もかなり高いものがあります。「外大9条の会」は、本会が発足した6月を中心に2007年以降、毎年 年次総会に併せて記念講演を催していますが、この講演もコロナによる2年間のブランクを経て今回で17回を数えることになりました。今回、保阪さんをゲストにお招きしようということになったのは、昨年9月の本会事務局会議で、本年(2025年)が戦後80年という“節目の年”ということもあり、保阪さんがゲストとして相応しいということになった経緯によります。

講演が確定したものの、保阪さんが高齢であり、かつ多忙であることなどから果たして本当に足を運んでいただけるのだろうかとの不安もありましたが、これは杞憂に終わり、予定通り講演していただいた次第です。

保阪さんの講演を貫いていたのは「常識で物事を考えよ」という姿勢でした。最近の沖縄のひめゆりの塔を巡る某国会議員の発言は、保阪さんに言わせれば「ずさんという以前に『常識』に反するのだ」ということになります。また、「憲法改正を主張する人たちは旧憲法の時代に帰るようなことを平気で言うが、これも『常識』に反している」と述べています。その上で、「いろいろ問題はあるにせよ、江戸時代の265年は少なくとも戦争はしなかった、戦争するようになったのは日清戦争からアジア太平洋戦争での敗戦までの50年の間だけだ」ということです。そして、世界平和を説いたカントを引き合いに出し、「265年も戦争をしなかったということは、何か日本人の中に流れているものがある。それが現代史の中に通じているのではないか。一人ひとりの中に小さな『カント』がいて、それが国民としての『カント』になっているのでは」と結びました。

講演終了後は場所をアゴラカフェに移してささやかな懇親会を持ちました。懇親会には保阪さんも同席されました。今回の年次総会には遠く奈良や大阪からも本会の会員が参加しましたが、全て終了した時には雨もすっかり上がり、「終わり良ければ全て良し」、充実した会合となりました。(講演録をお読みになりたい方にはテープ起こしのPDF版を配信しますので、その旨、お申し出願います)

投稿者: 鈴木 俊明 スペイン語1972年卒

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