2024年 歌会始に寄せる 和歌の力、再認識――年の初めに、歌会のある国とは


国民と皇室が一体となって年始に歌会を行う国など他にあろうか。
毎年1月のこの時期に、「お題」を決め9ケ月掛けて国民から詠進歌を募る。応募者は中学生からシニアの幅広い和歌好きな方々、2万人近い方から5・7・5・7・7が届く。今年は1月19日の皇居「松の間」で選者に選ばれし栄誉ある国民の歌が10首ご披露される。

2024年お題は、「和」であった。「幾年の難き時代を乗り越えて和歌のことばは我に響きぬ」が愛子さん(内親王)の歌ですが、和歌を好む国民の心に近い表現に思う。

50歳過ぎてから15年ほど外国、アメリカ中東・印度パキスタンとさ迷い歩くうち祖国へと思いが募るのは必然の流れ。その中で、万葉集(同世代のリービ英雄氏の「英語で読む万葉集」をもっていき、何時も読んでいた。
2005年から5年間、アメリカの誇る世界的自動車メーカーのゼネラル・モーターズ社との経営問題闘争(部品製造の品質問題、労働組合問題―最後は600名以上いた弊工場を閉鎖、メキシコへの移転準備とした―そのためワーカーたち大量解雇実施し、工場のある町全体を敵にした形で白人の町と法的戦いを行った)からくる、アウエイである米国中西部での孤独な工場長の立場でストレスの解消に、先のリービ氏の万葉集(英語)を読んでは、大和魂を呼び起こし、連日の産業組合との問題解決に臨んだ。

国土自然・言葉・歴史が国の形とおっしゃった方がおられるが、その通りと感じる。国土・自然は世界に冠たる「大和はまほろば」の国、誰も否定はできません。

歴史について。
世界の関心を集めた英国女王、デンマーク女王のことに触れたい。欧州歴史の最長国であり、900年から1000年の重みに耐えてきた国になる。1000年前と言えば、日本は中世、源氏物語が世界代表する長編小説として大和言葉で完成を見た頃合い。更に歴史は古代に遡り、日本の国家形成であった大和時代、そして、民の竈の煙を心配する為政者の存在した時代から
神話になる時代を含めてみれば、歴史はさらに広がる。世界が皇室に尊敬の念を一様に見せることに合点がいく。

ヤマト国の自然、森林王国の環境の中で、世界最長の歴史の中、万葉集の時代に既に和歌の支配する古代社会が生まれていた。先の愛子さんのような若い方が、そのような古代社会からの歌による人々の営みに感動する心は自然のように思え好ましい。

私自身、宮中歌会始に詠進歌を始めて、自身参加したのは2002年。その前年に父が風呂場で溺死。亡くなった父親は宮城県の定時制高校で数学を教えていたが、子供たちの教育にはすべて投げうっても支援という生き方が、私にも流れている。当時のお題は「春」だった。作った歌は、「入学の 子走る坂 春の風 父が声する 伸びよ おがれと」(「おがれ」は東北弁で成長するの意)高校入学式に坂道を駆け上がる子供の未来を父の言葉で表現した。

それは、ちょうど愛子さん(内親王)が生まれたころで、雅子皇太子妃(当時)の歌は、
「生(あ)れいでし みどり児のいのち かがやきて 君と迎える 春すがすがし」 と 授かった愛子さんの命に触れた。親から子へ繋がる歴史観溢れた歌詠みが随所に現れる、この国の幸を示す。

1300年以上前に読まれた万葉集にも見られる、数多の読み人知らずの歌。多くの普通の人の歌が詠まれていることに感動する。ああ、この国は和歌心で満たされている。東歌、防人の歌もある、挽歌もある。このような和歌の言葉や歌心に心打たれるという文化・伝統が今も続いている。ヤマトの心を再認識してみよう。

世界に和歌(俳句も世界に広がっている)を広めて生きながら、国土(自然)、言の葉、歴史の生み出す日本という国柄へのリスペクトを基本にして、世界の仲間たちと世界平和への思いを共有していきたいものだ。

投稿者: 佐々木 洋 英語 1973年卒業

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