「文化メディアシオン―作品と公衆を仲介するもの」(新刊訳書)の紹介


波多野 宏之(はたの ひろゆき)氏がこの7月に新刊訳書を白水社から出版された。
同氏は本学出身で図書館・美術館勤務という異色の経歴を持ち、美術情報学分野における日本でのパイオニア的存在。詳しくはユニークな下記略歴をご参照。

本書によると美術館、博物館、歴史的建造物、これらについての展示パネルや音声ガイド、劇場や映画などの字幕解説、ワークショップなど「人と文化を結ぶ」諸活動が、いわゆる「文化メディアシオン」ということである。

日常生活の中で「ヒト、モノ、カネ、情報」は、大切な4大価値であるが、「文化メディアシオン」はこれらすべてを扱う総合的な分野といってもよい。

「文化とは何か?」、「文化財とは何か?」、「文化価値とは何か?」、「(日本の文化も大切なのに相変わらず)なぜ日本政府の担当部署が「庁」から「省」に格上げならないのか?」など、文化についていろいろ再考する良いキッカケになると思います。

同氏 は入学から 1968 ~ 69 年の学園紛争時にかけて中野区上高田の日新寮に寄宿していたとのことで 6 月の卒業となった由。もと関東大震災の避難収容受入れの場所でもあった、日新寮を貴重なもの、「時代の記録」として「日新寮アーカイブズ」 の形で残す作業(デジタ ル文書・画像化)にも取り組まれました。

日本は公文書管理法制定(2009)など法制面の整備、 文化財の保護、作品のデジタル・データ化、ネットワークなどフランスの文化政策から多くを学ぶ必要があると思われます。是非、ご一読をお薦めしたい。

投稿者:金澤脩介 フランス語 1968年卒業

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〇波多野 宏之氏 略歴
東京都立中央図書館などの勤務を経て、1992 – 2003年に国立西洋美術館主任研究官を務める。3 度に亘るフランス滞在 [1984-85 年仏政府給費留学(ポンピドー・セ ンター)、1995-96 年文部省在外研究(ルーヴル美術 館内文化省中央図書館・アルシーヴ)、2013-14年国立文化財学院招聘研究員] で貴重な経験を積んだ。

2004年「文化情報学」(博物館・図書館・文書館、映像、観光情報、コンピュー タなどの総合学)を謳う駿河台大学文化情報学部教授となり、同学部長を経て、2008年に副学長に就任。後に学部改編によりメディア情報学部教授となり、現在名誉教授。

専門はアート・ドキュメンテーションや文化環境の日仏比較であり、美術情報学の分野では日本の重鎮の一人である。研究活動ではアート・ドキュメンテーション学会初代会長、日仏図書館情報学会会長、日本図書館情報学会理事などを歴任した。

〇ご参考:
・2003年:第5回 図書館サポートフォーラム賞受賞
・「仏友会」での講演会
演題 は「情報メディアの伝統と革新-フランスの図書館・美術館 に学んで」。
時代の先端を行くデジタル技術、画像ドキュメン テーションの話を中心に「文化財」の保護・保存・活用について、講演。
「文化大国、ミュージアム大国フランス」での貴重な研究・経験などを披歴。
・仏友会会報誌LA NOUVELLE No.5 に掲載記事「情報メディアの伝統と革新―フランスの図書館・美術館に学んで」(2010年9月15日号)

文化メディアシオン:作品と公衆を仲介するもの (文庫クセジュ)
by ブリュノ・ナッシム・アブドラ, フランソワ・メレス, et al. | Jul 1, 2023 1,320円

関連著書:『画像ドキュメンテーションの世界』(単著,勁草書房,1993年)
『図書館資料利用論〈1〉』(単著,放送大学教育振興会,1998年)
『デジタル技術とミュージアム』(編著,国立西洋美術館,2001年)
『フランスの美術館・博物館』(共訳,ジャック・サロワ著,波多野宏之/永尾信之訳,白水社,2003年)

 

 

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