荒川詔四著「参謀の思考法」を読んで


元ブリヂストン社長、荒川詔四さんの新著「参謀の思考法」ダイヤモンド社、6月3日初刊はとても有益な本なので、お知らせします。難しい任務をやり遂げる過程で体得した教訓にあふれています。荒川さんはいうまでもなく本学タイ科1968年卒で、外語から名経営者が出たことを誇りに思います。

1988年、ブリヂストンがFirestoneを買収する直前に、荒川さんは家入社長によって秘書課長に抜擢され、proactiveに社長を支えた当時の経験が本書の核心部分です。その後、ブリヂストン・ヨーロッパをCEOとして再建。2006年に社長に推されるや2年後にはリーマン危機に襲われたが、危機こそチャンスと、Firestoneから引き継いだ不採算工場や拠点を統廃合し、ROA(Return on Asset、総資産営業利益率)を6%に高めるなど、6年間に多くの業績を挙げました。Firestone買収後のPMI (post merger integration,買収後の統合作業)に20年間もかかり、当事者の苦労は貴重なノウハウとして会社の財産になっていることでしょう。

手柄を上司にあげるのは効率よい投資、能力の高い上司に恵まれることは稀、トラブルは順調に起こる、といった職場で日常的に起こることへの合目的的対処法に始まり、理論より現実に学ぶ、原理原則を思考の軸に、ビジョンを社員と共有する、といった基本中の基本に惹かれながら、一気に読み通しました。

邦訳「1兆ドルコーチ」が語るように、Bill CampbellはGoogle, Apple, Amazonなどの経営陣に創業当初からone teamの大切さを教え、巨大企業育成に貢献しました。永守会長は一代47年間で日本電産を築きました。Campbellの指導も、永守会長の経営も、荒川さんと共通点が多いと理解しています。因みに荒川さんと永守氏は1944年生まれの同い年です。
またこの機会に、所蔵する荒川さんの最初の本、「優れたリーダーはみな小心者である」ダイヤモンド社、2007年刊も読み直しました。2冊はセットで読むと理解が深まります。

投稿者: 蓮見幸輝 英米語 1966年卒業

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