村山則子氏の新刊書「ベルリオーズ ドラマと音楽 リスト、ワーグナーとの交流と共に」の紹介


今般上記タイトルの力作が刊行されました。著作者は本学出身の村山則子氏
(F.1968年卒)で、これまで多くの著作物を世に送り出してきました。
いわゆる「二刀流」で学術的な出版物/研究書は村山則子名(本名)で、文学作品は村山りおん名(筆名=ペンネーム)で執筆されています。

フランスの演劇とオペラとの関係性についての研究を長期に亘り行ない、東京藝術大学の音楽文芸で修士号、博士号も取得されています。ベルリオーズ(Hector Berlioz)についての研究書は、(出版社に依りますと)どうも約60年以来のようです。

フランス・オペラの伝統「トラジェディ・リリック」(Tragédie Lyrique、抒情悲劇)や、ベルリオーズのパリ・オペラ座公演までの苦労話、当時の彼に関する毀誉褒貶についても言及されています。作曲家、著作家、音楽評論家などとして有名ではありましたが、私生活を含め波瀾万丈の生涯を送りました。(享年65歳)
ヨーロッパ各地(ドイツ、オーストリア、ロシアなど)での演奏会を通じて知名度を次第にアップさせていったようです。
オペラ(イタリア語で「作品」の意)は物語、音楽、バレエ、合唱、オーケストラなどで時代性を背景とした情景描写で作品を作り上げていく「総合芸術」と言われています。著者に依りますと、有名な代表作品としては伝統性と革新性を大事にする以下の2作品です。
・「幻想交響曲」(幻想交響曲)
・「ロメオとジュリエット」(劇的交響曲)
また、これまであまり論じられなかった、ベルリオーズを巡るリストとワーグナーとの交友関係にも言及されています。
著者が「ドラマと音楽」の観点から、ベルリオーズを中心にリスト、ワーグナー等残されている書簡や自伝の数々に当たり、多感な鬼才の人間像、彼の人生の「光と影」について根気強く取りまとめた力作だと思います。(約440 ぺージ)
ドイツ音楽とフランス音楽との普遍性的な音楽の力の比較、どちらが先かと言う“音楽と言葉“の位置関係のことなど、なかなか興味深い記述もあります。
特にフランス音楽の、独特のリズム感、繊細さ、しなやかさ、力強さ、そしてラモー⇒ベルリオーズ⇒ドビュッシーへと続いて行く系列。
パガニーニ(Niccolò Paganini)が「ベートーヴェンの後継者はベルリオーズ以外にはいない」と賛辞を贈ったということなど、本書で初めて知った次第です。

ベルリオーズや当時の音楽状況(含む、交友関係)などにご関心ある方には、是非ご一読をお薦めします。

金澤脩介(F.1968年卒)

出版: 「作品社」 刊 3,960円(税込み)
     東京都千代田区飯田橋2-7-4  電話:3262-9753

付記:
又、村山さんはその他の著作物も多数発刊されています。下記ご参照。
『石の花冠』(第5回小島信夫文学賞受賞)など色々興味深いものがあります。

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