友の耳、母たちの耳(人と人をつなぐもの)――聴力の低下:ベートーヴェン第九初演から200年に寄せて


「楽生超寿」を昨年7月に提案しほぼ1年が過ぎた(会員便り2023年7月6日投稿)。シニア層向けに、人生後半戦は楽しみを追いかけながら、気が付けばいつの間にか百寿(100歳)を超えてなお止まずの自己を見つめる姿勢の提案だ。「百寿山登り」も7合目くらいだろうか、ここで一息入れこれからを展望するのも悪くないだろう。

上記で提案した「健康で長生きトリセツ」には、スキーヤー三浦雄一郎氏の父上・敬三さんの主張する健康極意を最大限参考にさせてもらっている。

その極意の1番目は舌と咽喉の運動(昔から言われたホムンクルス脳活性化に繋がるペンフィールド・ホムンクルス脳地図参照)

2つ目は首の運動――朝起きた直後、首を回す運動。これは私自身気にする頸動脈プラークのサイズ管理(血流、血行促進)に合うものという気がする。

3つ目以降は放置状態。ちなみに3番目は鼻を通じた香り活用による「聴力改善」策だった。

本日のテーマである聴力低下に触れてみたい。

敬三さんは聴力改善のための「香り呼吸法」を提言。具体的には右脳刺激の為、右の小鼻を手で押さえて、左の鼻で香りを深く吸い込む、鼓膜にまで香りがいき渡るように数秒息を止めて、口から息を吐く。これを25回繰り返す。(脳の言語野は左脳と教わった気がするが)

私自身振り返ると、過去2回の人間ドックで聴力は4000ヘルツより高い範囲が聴きとれていない(へッドフォンを通して圧は感じるが、「音」としてキャッチ出来ない)

振り返ると、銀行勤務時代の10年先輩で、今は兄貴のような感じでお付き合いをしているS さんを思い出した。私が65歳から69歳までパキスタンのODAプロジェクトに関与し、事業終了報告書をJICA本社に提示したと報告にいくと、彼はやんわり自分もかつてモンゴルでODAプロジェクトに参加したが突然難聴に襲われ、会議の話が分からなくなった。70歳の時だったがビジネスの現場から去ることを余儀なくされたと悔しそうに話してくれた。

もう御ひと方、T さんにも触れる。14歳上の石油業界の方、銀行時代に3年出向した経産省傘下の財団勤務時の上司。こちらは健康の事例。この方は親父さんを65歳で亡くしたためか、健康管理には人一倍気を使った。今は週一でゴルフラウンドするくらい健康そのもの。私が驚いたのは家でTV聴くときの音量が12レベルだという。我家を見ると20のレベル。彼が70代前半の話であったと思うが我耳の衰えを言われたようで、心に残っていた。

難聴や聴力をテーマにググれば、どうしてもヘレン・ケラーの話が出て来る。ご存じ「努力の天才の人」であったが、時代の幸運も作用したように思う。ヘレンの金持ちの父親が全米の難聴に詳しいドクターを探し続け、なんと電話発明家グラハム・ベルと出会う。知らなかったが、ベルは母親の難聴対策を始めた彼の父が「視話法」を開発、その後を受け、難聴者のための学校を運営し、難聴者救済事業のパイオニア的存在だった。ベルの妻はこの学校の生徒の一人であったという。多忙だった彼はお弟子さんの一人、サリバン女史をケラー家に派遣し、その後の物語は、映画「奇跡の人」(アン・バンクロフト、パテイ・デューク主演)で皆さんよくご存じのところ。ヘレン・ケラーは、三重苦の中では、「聴力喪失」が一番大変であったと記録している。視覚障害は、主として「人と物」、聴覚障害は「人と人」とのつながりにとって大きな障害であったと。

時代は遡り、ベートヴェンの難聴との格闘を避けては通れまい。今年は第九初演(1824.05.07)から200年にあたる。彼は当時主流の大型ラッパ型の補聴器を使いながら20代から始まる聴力低下の病と闘っていた。聞けば人が音を聴くときには、外耳から鼓膜への伝音(気導)、中耳からリンパ液の振動にかえ脳までの感音のルートという複雑な構造を耳にお願いしている由。ベートーヴェンは、口に指揮棒を銜えて得意のピアノの鍵盤を叩きながら、ピアノソナタ名曲の数々を生み出したことになる。骨導(頭蓋骨から中耳へとつなぐ)活用による難聴との闘いという話だ。ヒト族の難聴との止まない闘いがあったことに感動を覚える。

さて、「百寿山登り」に話を戻そう。SさんのODAからの途中リタイア話のこともあるが、自分自身2019年9月パキスタンODAプロジェクトを終了し帰国の際は、将来もう一回ODA案件にチャレンジし、出来ればアフリカ大陸の人材育成に捧げたいとの思いを抱いていたが、ご承知のCOVID19に遮られての不完全燃焼状態にある。Sさんの途中リタイアの無念を晴らし、且つ私自身の夢実行のため健康長寿を実践し、百寿なる歳までに再度ODA挑戦、アフリカ大陸へ行こうと勝手に心で決めている。

Sさんには、日本の優れた医療技術革新で何とか補聴器革新が実現し、より高性能の人口耳を使えるようになってほしいと願う。彼曰く高価な補聴器を使用しているが、その実態はといえば仲間内の対面会も10人の場になると正直皆の会話を聴きとれない、相手は2-3人がいいところだと正直に教えてくれた。ヒト族は今や改めて月に人類を運ぶ時が来ている。

人と人をつなぐ大事なツールの補聴器の技術革新も何とか推し進めてもらいたい。

ホムンクルス脳地図では、「脳との舌と指の関係性」は有名だが、耳と脳の関係はあまり語られていない、しかし時代を経て、今や聴力低下と認知症の関係は明らかだ。94歳で亡くなった義母は、おしゃれ志向で補聴器を最後まで使わなかった。ワイフ曰く、それで認知症が早まった由。一方、実母は東北の田舎のこともあったのか、補聴器利用など考えになかった時代、80過ぎて認知症になる前には相手の会話が聞こえていなかったシーンが度々あったこと思い出す。今、85歳までに二人に一人は発症するといわれる認知症だ。シニア層にとって避けて通れない課題。発症確率は女性が40%台、男性が30%台とデータが示す。

聴力検査で高音部分が聞き取れていないと認識した自分としては、「健康超寿」師匠の三浦敬三氏の教えである「香り呼吸法」を早々に実践すべく、2019年帰国時パキスタン土産として頂き、家で放置したままのフレグランスEDGE(EAU DE PARFUME)があったことを思い出し、瓶を取り出して「敬三師匠、これまで教えを聞かず申し訳ない」と呟きながら、毎朝パキスタン製の香りを25回かぐことを、朝のルーティンとしたところである。聞けば若いアロマセラピストさんが、精油を耳に塗って聴力改善(外耳と鼓膜間の伝音改善になるらしい)と説明している。色々やることはあるようだ。

健康オタク・シニア層の一人としては、視力対策には40代から始めた眼鏡、鼻には鼻うがい励行、口(口腔)には歯周病治療(年一の歯石除去)でケアし、頭(頭髪)の方は60代からミノキシジル内服のAGAなど実践してきたつもり。しかしながら、耳(聴力)は何もしてこなかったなと反省。効果があるようなら又いつか、ご報告させていただく。

投稿者: 佐々木 洋 英語 1973年卒業

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