外大9条の会、本年の例会は李昤京(リ・リョンギョン)さんで


20190305-1    20190305-2

本年2月9日、7回目となる高田馬場F・Iビルでの“ミニ講演会&ワインで交流会”が開催され、5年間ほど本学で学部生に「平和学」の視点をベースにして「現代社会の諸問題」を講義した李昤京(リ・リョンギョン)さんに「朝鮮半島の大転換―平和と人権の時代に向かって」というテーマで講演していただきました。インフルエンザの流行に加えて数日前からの大雪の可能性に言及した天気予報とで出席予定の会員5人以上が参加を取りやめ、開催そのものが危ぶまれましたが何とか20人以上の参加で予定通りの開催にこぎつけた次第です。

先ず李さんは『災』という昨年を表す漢字について、昨年は日本では災害が多発し、また殆ど解明されなかったモリカケ疑惑やセクハラ問題を見ると妥当かも知れないが、朝鮮半島について言えば「改革」「変革」の『革』という字を選びたいとのことでした。確かに昨年6月のシンガポールでの会談に続き、今年は2月27日にハノイで2回目となる米朝首脳会談が開かれ、朝鮮半島をめぐる情勢は大きく変わりつつあります。李さんは「啐啄(そったく)同時」という禅語を引用し、現今の機運は内外から同時的に「殻」を破る動きに触発された結果だとの見解を述べています。もちろん韓国国内では朝鮮半島における緊張状態から何らかの利益を得ている層が存在しており、彼らにとっては「南北統一」は好ましくはないけれど、李さんは長期的には「休戦」状態にある朝鮮半島の「終戦」を実現した後の「統一」実現に向けた動きが加速していると見ています。ただし、その第一歩はEUの初期段階のような「南北連合」を想定しています。

徴用工裁判以来、日本と韓国との間にはギクシャクしたものがありますが、李さんは韓国での「反日」とは「反・日本帝国」であり、時間をきちんと分けて考える必要があるとも述べています。そして、今年1月末に92歳で亡くなった元慰安婦の金福童(キム・ボクドン)さんについて次のように語りました。

― 彼女はベトナム戦争の際に韓国軍の兵士によって性暴力を受けたベトナムの被害者のために基金を創った。また、東日本大震災のニュースを知って、真っ先に救援募金に応じた。かつての日本は彼女にとって悪い国だが、今の日本は友達の国なのだ ―

李さんは「金さんが苦しむ人々に対して抱く想像力は彼女の経験によるのではなく人間性に根ざしている、そこが今の大転換の時代に日本がもっと必要なことではないのか」と講演を締めくくりました。講演終了後は講演内容について質疑応答しながらワインを飲み、文流で用意していただいたイタリア料理を賞味しつつ歓談しました。

なお、本年6月15日、毎日新聞での評論など多方面にわたって活躍されている本学出身の作家・吉永みち子さんに記念講演をしていただくことになっていますので、お問い合わせ等ありましたら下記メールアドレスにご一報願います。

tufs_peace9@yahoo.co.jp

投稿者:鈴木 俊明 スペイン語 1972年卒業

本投稿へのご意見、ご感想等はこちらまで

,