去る2018年7月22日(日)に本郷二丁目の「サロン・ド・サングリエ」で開催された「ラモー 芸術家にして哲学者」講演会(日本フォーレ協会主催)に出席した。参加者数は約80名(収容人員)。
講師は本学出身(F.1968卒)、異色の作家村山則子氏(ペンネーム:村山りおん)である。同氏は作家の他に詩作や絵画制作(個展も開催)、更には歌唱(フランス歌曲他)など実に多彩な才能の持ち主である。著作も多数(『石の花冠』で第5回小島信夫文学賞受賞)。
フランスの古典演劇とオペラの研究を長期に亘り行ない、東京藝術大学の音楽文芸で修士号、博士号も取得している。
講演はこれまでのラモーについての研究成果を経歴、オペラ音楽家、哲学者など側面から要点を纏めたレジュメに沿って行われた。(90分)
詳細は、書籍『ラモー 芸術家にして哲学者 -ルソー・ダランベールとの「ブフォン論争」まで』(村山則子著)を是非ご一読されることをお薦めしたい。
講演はラモーの音楽家・芸術家としてのオペラと、又哲学者としてのルソーとの「ブフォン論争」を中心に研究成果を披歴された。(伊仏音楽の優劣論争など)オペラは16世紀末から17世紀初頭イタリアで成立した歌劇で、歌唱を中心に器楽、舞踏を加え、歌手が扮装して演ずる舞台劇であり、言わば「総合芸術」である。
ラモーは「クラヴサン曲集」(1706年)、「和声論」(1722年)を世に送り出している。「芸術家にして哲学者」という「二面性」をもつラモーは、また毀誉褒貶の激しい人物であったが(フランス革命後も特に評価はされず)、19世紀末にサン・サーンスにより「フランスがかつて生んだ最も偉大な音楽の天才」として再評価された。又、今年没後100年を迎えるドビュッシーはラモーを「フランス音楽の伝統の輝き」と称え、18世紀の啓蒙主義者ダランベール(『百科全書』の編集責任者)は「哲学者たる芸術家」と称賛している。
この講演会終了後には染谷温子氏(ソプラノ)、野澤知子氏(ピアノ)によるミニ・コンサートがあり、ラモーの楽曲《イッポリートとアリシー》や《プラティー》などが素晴らしい高音・美声とピアノ伴奏で紹介された。
明るく洒落た会場で、充実した、楽しい午後のひと時を送ることが出来た。
ラモー 芸術家にして哲学者―ルソー・ダランベールとの「ブフォン論争」まで
• 村山 則子【著】
• 価格 ¥4,536(本体¥4,200)
• 作品社(2018/05発売)