「外大9条の会」総会、記念講演は本学大学院 中山教授


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本年の総会は6月9日午後1時から、昨年と同じ研究講義棟115大教室で行われました。涌井さん(外C1971)から昨年度の活動経過ならびに収支報告がなされ、続いて今年度の活動計画・予算案が提示され、いずれも拍手で承認されました。そして小休止を挟んで午後2時から本学大学院総合国際学研究院教授で経済思想史が専門の中山智香子先生に「戦争と経済―パックス・アメリカーナの行方」という演題で講演していただきました。本講演についての要約は以下のようになります。

第一次大戦後「パックス・ブリタニカ」から「パックス・アメリカーナ」の時代となった。前の時代と大きく異なるのは、「科学的平和」、換言すれば「経済的に合理的な平和」が核心になったことだ。つまり、コスト・パフォーマンス、コスト・ベネフィットを重視する考え方で、「領土拡大など時代遅れだ」と言うもののベネフィットが大きければ「戦争も厭わない」ということにもなる。然らば何故「科学的平和」の概念が生まれたか? すなわち20世紀の戦争は総動員・総力戦になり、これを遂行するには経済力が重要なファクターになり、結果「平和」概念にも影響することになった。
冷戦終結を経て21世紀になった途端「9.11」が発生し戦争の在り方が決定的に変わる一方、戦後の国際通貨・金融制度であるブレトンウッズ体制のほころびが明らかになったことにより、戦後世界の矛盾を背負っていた覆いが軍事・金融両面で取れてしまい、「パックス・アメリカーナ」の崩壊につながった。
かかる状況下、トランプ大統領は国際社会におけるヘゲモニーを何とか握り続けようとして米朝首脳会談に臨む一方で、場当たり的な「貿易戦争」を仕掛け自国の農業・工業などの産業を守るため自由貿易に反対さえしている。もはや国際自由主義システムそのものが限界に達しており、大きな曲がり角に差し掛かっている。
それでは私たちはどうするか? もはや経済的な論点にさえ「情報」という概念が関わってくるが、情報(記録、記憶、知ること)を奪われないための闘いが大切。そこで紹介したい言葉が「抵抗の第一歩は、記憶を抹消されないことだ」(映画『ショック・ドクトリン』)。抵抗を持続していくためには、時に他人とも記憶を共有しながら、その記憶を抹消されぬようにしてゆくことだ。

そして、あの人種主義者、性差別主義者のトランプでさえ「私は人種主義者ではない」と発言するに至ったのは、息の長い闘いの結果、「人種主義は悪いものだ」という見方が定着してきたからだという事例を引いて、中山先生は参加者に「しつこく闘っていこうではないか」と呼び掛けました。参加者からは「日頃よく分からないままにしていた事がだいぶ整理され、大いに役に立った」という感想が多数寄せられました。講演終了後、午後5時から懇親会を催しましたが、今年は中山先生の他に先生の同僚やゼミ生など関係者も出席したこともあり、いつもよりは若返ったかも知れません。また、50年ぶりの再会など、劇的な出会いもありました。

昨年よりさらに劣化した政治状況をこのまま看過してよいのかという個々人の良識が問われている今、少しでも事態を改善しなければと思われる方は下記までご連絡下さい。ともに現状打破に向けて歩もうではありませんか。

連絡先: (Eメール)  tufs_peace9@yahoo.co.jp

投稿者: 鈴木 俊明 スペイン語 1972年卒業

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