ベルリン在住の永井潤子さんの本


鈴木幸寿元学長が現役教授だったころの社会学・社会心理学ゼミの仲間、1年先輩、ドイツ語学科の永井潤子さん(ベルリン在住)が、新しいご本を上梓されました。『放送記者 ドイツに生きる』(未来社・2200円)。内容は、未来社の月刊広報誌『未来』に「ドイツと私」と題し、2008年から2013年にかけて毎月書いてきたエセーを編集し、1冊にまとめたものですが、自民党から民主党への政権交代、「3・11」、福島原発事故、民主党の自壊・敗北、安倍政権再登場、参院選・自公勝利、歴史認識問題重大化、改憲ムード増大といった日本の政治情勢の変化に対応する時期だけに、それらをドイツのメディアがどうみているかなどの事情を紹介しながら、永井さんが日本についての心配をわかりやすく、多面的に述べていらっしゃるので、とても読み応えがあります。たとえば、原発事故の当事者である日本がもたもたしているのに、なぜメルケルは迅速に脱原発に舵を切り替えることができたのかを、市民の側からも、政治家や政府の側からも、解明していますが、とても参考になります。また、日本では、中国・韓国・北朝鮮に対する反感や敵意が高まりつつありますが、この間の安倍政権の「歴史認識」について、ドイツのジャーナリズムが敏感に反応している状況と、それらの点に関して永井さんが披瀝する所感も、一読に値するものです。外語の先輩がこうやって活動していることが嬉しく、会員諸氏にお知らせするしだいです。

桂  拝

■桂 敬一  1959年卒業 フランス語