映画で死者の書を朗読

2017-01-31_135350

《思いがけない出会いが重なって、折口信夫「死者の書」を映画の中で朗読することになりました。》

映画「熊野からロマネスク」公式ホームページ
2月18日より
東京 シアターイメージフォーラムにてモーニングショー公開予定
11時10分より 毎日1回上映(3月10日まで)

 この映画の監督は高校の同級生 田中千世子さん、御茶ノ水女子大学国文科卒業後、高校英語教諭のかたわら執筆していた映画評論で認められ、映画評論家として活躍し、自らメガホンを取ってこれが 9作目の作品です。
西洋音楽一辺倒だった私が能に辿り着き、朗読をするようになった経緯は・・・
小学生の間ヴァイオリンを習い、美術よりはるかに音楽好きの私は、外大に入学したものの、大学紛争まっただ中、授業はなくてもオーケストラはあるという状況の下で、直ちにその一員となり、後にコンサートマスターを任されるという望外の成り行きが待っていました。しかも当時 東京芸大から迎えていた学生指揮者は矢崎彦太郎氏に次いで、小泉和裕氏が来られ、その後の両氏の活躍を知れば実に幸運な経験でした。
物心ついてからの私は西洋音楽ばかりでしたが、杉並に住んでいた幼い日、近所のお宅から謡を稽古する声が聞こえていた記憶が呼び覚まされると、それが意識下で重奏低音のように密やかに鳴っていたのかもしれない、と思うようになりました。
学生時代から表千家茶道に親しんでいたものの、静かなものだけでは物足りなく、かねてから剣道に憧れていた私に、武道の世界へ扉が開いたのはすでに不惑の歳でした。なぎなたを始めて数年経った時に田中監督から観能に誘われるようになり、自らも金剛流の稽古を始めました。すでに知命を越えていたものの、初めての師が金剛流の名手・豊嶋訓三先生であったことは奇跡というほかありません。
たちまち謡にのめりこみ、ようやくイロハが少し分かりかけてきた一昨々年、師が急逝されました。
その頃通っていた平家物語講座では毎回音読しており、古典朗読に興味を抱き始めていました。茶道にも能にも古典は不可欠なものです。そして偶然、古典朗読コンテストの最終審査が京都・金剛能楽堂で行われる事を知り、もとより憧れの金剛能楽堂!ですから、応募してみるとまさか?の次点、京都府知事賞を戴いてしまいました。人生何が起こるか分からない、とはよく言ったものです。
近所の洗足池図書館で館長さんと知らずに雑談したのが契機となり、図書館の文化活動を増やしたいとの希望があって朗読会開催が決まりました。
第一回目は、山本周五郎「狐」、小泉八雲「停車場にて」そして、三島由紀夫「葉隠入門」抜粋を選びました。朗読会とはいえ、朗読に加えて自分なりの解説や色々の発見などもお話ししています。
この時は初回でしたから友人数人に案内を出し、1時間余りを聴いてくれた中に田中監督がいました。旬日後、撮影中の映画の中で朗読を、と依頼された作品は「死者の書」でした。些か怖気づきましたが本がすでに本棚に在り、音読を繰り返す内に、文字を目で追うだけでは感じられなかったものが見えてきたのです。たしかに折口は口承を重んじる人でしたから、作品が音読されることは当然視野に入っていたに相違ありません。
皆さま、お忙しくお過ごしと存じますが、 映画をご覧いただき、映画と折口の魅力あふれる世界観に触れていただきましたら、これに勝る幸せはありません。ご高評下さいますよう何とぞ宜しくお願い申し上げます。
主題は何か、とか、監督の意図は?等を暫く措いて、ゆったりと映画に身をたゆたわせるようにご覧いただくのも一興かと思います。

投稿者 : 中村 洋子 中国語 1973年卒業

本投稿へのご意見、ご感想等はこちらまで