本の紹介 詩集『おばけ図鑑を描きたかった少年』

本学の前身、東京外国語学校仏語科出身の詩人北村太郎の詩集タイトルに名を負った出版社「港の人」より、詩集『おばけ図鑑を描きたかった少年』を上梓しました。2014年度朝日埼玉文化賞受賞作「ときのかけら」を含む23篇。ボードレール、サン=テグジュペリなどフランス文学にインスピレーションを得た詩もあります。カバーの白い丸は少年の心や、彼方へと通ずる光を表しています。

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「サンテックスひとりぼっち」

星々の高みから染み入るように
広がる光のヴェールのもとで
夢を見ていた
不時着したプロペラ機のかたわら
鈍く光る砂丘に身を横たえて
両腕を胸に交差させ
空の水面を眺めながら
夜明けを待っていたのだ

目を覚ましたとき
星の海とのあいだに
介在するものは何もなく
すがりつくものとて何もなく
重さはみなゆったりと
すいこまれていった
しかるに男は
貝殻の入り混じった砂の船台に
身を横たえていたのだ
この船がおれを運んでゆくのか
砂と星々のあいだ
生の磁極が引き寄せる方へと

波打ち広がるテーブルに散らばる
星のかけらがあった
そうだ
これは林檎の木の下に広げられた
テーブルクロスだ
天の高みから落ちてきた
ずしりと重い林檎の実だ
疲れこごったからだはほぐれ
ホーウホウと歌うように
踊るように
サンテックスは歩き始めた

投稿者: 内山 憲一  フランス語1985年卒業