公民館の一室から、世界が見える④(「夏越の祓」を迎えて、日本の伝統を考える)


日本語教室の上級クラス担当の女先生から相談有り。
中国人生徒さん達
若い世代の、日本語上達速度は速すぎる。
この間、北京出身の新さんから頂いたお題、
「中国横笛と日本の笛(龍笛)文化の繋がり」、
あれはイイネ、
他にテーマあるって聞かれる。

言葉の勉強には、その国の伝統文化が常に付きまとう。
さて、次の授業に向けたテーマ探しだ。
この間、山東省出身の張さん、
2年前に日本語コンテストにも参加した日本語の上級者だ。
それでも最近の授業で天皇という言葉を正しく発音できなかったな。
天皇-授業のテーマにするには恐れ多いが、
日本国の成立ちの中で、必要な範囲で話すのも彼らの理解を深める
いい機会になるかもしれない。

日本語使いの天才作家、丸谷才一氏は、古代から
天皇の大きな仕事は
和歌を詠むこと(最後の大物、後鳥羽上皇がイメージかな)と、
恋愛をすることの2つだと言っていた。
彼らしい見方だと感心する。
でもそれだけじゃすまないぞ。
和歌の詠み手(明治帝は10万首近い、昭和天皇は1万首)でもあり、
皇室平和外交(今上陛下は、皇太子時代を入れれば既に60ケ国近くを訪問)を
担っておられる。

今は私の頭に、6月末の「夏越の祓」(なごしのはらえ)が
浮かんでいる。神道の実践者としての祭祀王の役目。
年末の大祓と共に、年2回
天皇が国民のために深夜国民の無病息災をお祈りを続ける、
年中、お祈りを続ける仕事である、大きな宮中行事。
古代疫病時代、現代の3・11やコロナを考えれば
疫病と自然災害が政の2大関心ごとは変わらない。

事実上の元首にあたる今上陛下が、
国家と国民のために祈る行事を目にすることは、この広い地球社会で
他にあるのだろうか。
バランスオブパワーによる賢明な国際外交の時代は
とうの昔に消えうせ、今や力の誇示、軍事費増額競争という現実、
そんな中、お祈りによる世界平和を求める天皇。
地球市民の多くはひやひやしながら、現代政治の行く末を見守っている。
およそ平和と言えないこの時代、キリスト教のローマ法王に匹敵するレベルで
お祈りをする大和国の祭祀王。
若い世代に説明することは、容易ではないと思うが
世界から大和国に来られた若い世代は、その感性をもって
その意義を感じ取れるだろうと期待する。

授業の展開としては、以下のイメージかな。
① 大和国で奈良・平安時代以来続いてきた、
伝統行事としての、お祓い(宮中行事)を理解してもらいたい。
夏季の疫病対策としては、日本三大祭りの祇園祭、
京都八坂さんが行う夏のこの時期の疫病退散願いが全国的に有名だ。

これは。年に2回(6月末、大晦日)、天皇が深夜から国民のために行う
お祓(過去6ケ月の罪穢れを清め、これから6ケ月の無病息災を願う)神事。

② 日本の多くの神社では、お祓いのため
「茅の輪くぐり」を行う、
夏越の祓に、神社で「茅の輪くぐり」をご覧になった方は?
お祓いの神事ですが、
元をたどれば日本の神話と結びつく。
スサノオノミコトと、蘇民将来の物語。
すべての国に、神話があるでしょう。

スサノオが蘇民将来に危機を助けてもらい、お礼に
お祓いのすべを教えたという伝説
(奈良時代に編集された「備後国風土記」の逸話が年中行事となり
今日に残ったものという)。

“みな月のなごしのはらへする人は千とせの命のぶといふなり”
唱えながら、左足から 右足から、また左足へと
茅の輪をくぐり、お祓いをする。
欧州のロイヤルファミリー史が
1000年のものであるに対し大和国の歴史が倍の長さである、
そこに神話がかかわり
史実と神話のハーモニーで、ヤマト国の歴史を支える。

③ この時期6月30日「夏越の祓」に合わせ、
和菓子「水無月」(外郎の上に小豆)を食する習慣がある、
今でも京都の方はこの日に和菓子を食される。
銀行仲間で後に京大で教授を務めた男も東京生まれの
せいか、京都出身の奥様から教えていただくまで知らなかった
と聴いたことがある。

食べ物の話は中国からの若い方たちは喜ぶかも。
何故6月30日に、水無月を食するのか。
歴史的には宮中では、旧暦6月1日に、「氷の節句」
(これも知らなかった)があり
京都北山に何か所かある氷室から、天皇に氷が届けられたという。
貴人たちは、冷蔵庫のない時代、このように涼をとっていたのか。
庶民には高価な旧暦6月の氷を食するのはとうてい無理な話。
高嶺の花。

代わって京都のお菓子屋さん連合(虎屋さんかな)が考案し、
庶民の口に届けたという。
我々は今かき氷を食べたいときに食べているが、ちょっと前までは
そうじゃないのか。
昔のご苦労を思いながら、来る6月30日には、
和菓子「水無月」(三角形の白い外郎を、氷に見立て、
その上にお祓いのための小豆を配する)を、ワイフ菩薩と食する
としようか。
先日日本橋の三越にある和菓子店に買いに行ったら、
あれは季節の菓子で、前日6月29日に買いにいらしてくださいだって。

投稿者: 佐々木 洋 英語1973年卒業

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